自由研究発表高齢者福祉6  浅井 正行

地域包括支援センターにおける介護予防ケアマネジメントの満足度と実践評価
   -利用者の満足度および相談員の実践自己評価の比較分析-

○ 明星大学  浅井 正行 (会員番号3535)
  首都大学東京  石附 敬 (会員番号6958)
  首都大学東京  加藤 利佳子 (会員番号6451)
  首都大学東京  和気 純子 (会員番号1605)
キーワード: 《高齢者》 《介護予防ケアマネジメント》 《満足度》

1.研 究 目 的

本研究は、東京都A市において、新規に介護予防サービス(予防給付)を利用した高齢者の介護予防ケアマネジメントに対する満足度と地域包括支援センター相談員の介護予防ケアマネジメント実践自己評価を比較検討することを目的とする。利用者本位のケアマネジメント実践の確立にむけて、利用者の満足度と提供者の自己評価を比較分析することを通して、改善に必要な課題を双方の視点から析出することが可能になると考えられる。

2.研究の視点および方法

本研究では、地域包括支援センターにおける介護予防ケアマネジメントの実践評価を(1)利用者の満足度および(2)地域包括支援センター相談員の実践自己評価により実施した。評価は、5領域(説明・情報提供、ケアプラン、相談員の態度、モニタリング、サービスの効果)20項目(各領域4項目ずつ)について、利用者とその利用者を担当する地域包括支援センター相談員の双方に「とてもそう思う」から「そう思わない」の4段階でたずねた。なお、質問項目の信頼性に関しては、Cronbach alpha値によって内的整合性の高いことが確認された。
  (1)利用者
   調査対象者は、平成19年11月~平成20年3月に要支援認定(新規)を受け、サービスを利用開始した利用者のうち、6ヶ月後の平成20年5月~9月の調査に回答した要支援者96名(女65名、男27名、無回答4)である。調査方法は、相談員による留め置き・郵送回収で行われ、回収率は66%であった。また、回答者については、本人(67.37%)、介護者(19.2%)、そして本人と介護者(13.5%)であった。
  (2)相談者
   調査対象者は、平成19年11月~平成20年3月に要支援認定後にサービスを利用開始し、6ヶ月後の調査に参加した要支援者96名の担当相談員である。調査方法は、地域包括支援センター担当相談員による無記名自記式アンケートで行われ、回収率は98%であった。回答者の資格は、介護支援専門員(62.8%)、看護師(22.3%)、社会福祉士(34.5%)、介護福祉士(37.3%)、そしてヘルパー(20.2%)であった(重複回答あり)。現場経験については、5年未満(9.3%)、5年~10年(35.0%)、10年~15年(22.1%)、そして15年以上(33.6%)という結果であった。

3.倫理的配慮

本調査では、地域包括支援センター職員が、訪問時に研究目的を書面および口頭で説明し、アンケートの返信をもって同意と見なした。調査票は無記名で行われ、台帳は現場で管理し、集計には対象者のコードナンバーを使用した。

4.研 究 結 果

上記の5領域計20項目に対して、利用者vs.相談員のT検定を行った。「説明・情報提供」領域の4項目では、有意差は見られなかった。残りの4領域では、16項目中12項目で有意差が見られ、それらすべての項目において利用者グループが相談員グループよりも肯定的な評価が高かった。「ケアプラン領域」では、4項目すべてにおいて有意差が見られた。「相談員の態度」および「モニタリング」では4項目中、3項目で有意差が見られた。「サービス効果」では、2項目において有意差が見られた。
   次に、利用者を要支援1と要支援2の2つのグループに分けて、同様の利用者vs.相談員のT検定を行った。結果は、利用者7項目そして相談員2項目で有意差が見られ、平均値では要支援1の利用者の方が、すべての項目において要支援2の利用者よりも高かった。利用者では、「ケアプラン」2項目、「相談員の態度」1項目、「モニタリング」3項目、そして「サービス効果」1項目において有意差が見られた。相談員では、「説明・情報提供」1項目と「モニタリング」1項目において有意差が見られた。
   最後に、満足度に関連している変数の有無を明らかにする目的で、利用者満足度および相談員実践評価度5領域と利用者変数の相関を調べた。利用者では、「暮らし向き(要支援者の経済状態)」を肯定的に捉えている人の「相談員の態度」と「サービス効果」が高かった。相談員では、「利用者年齢」が低い場合に「モニタリング」が高く、また、「要支援者の健康状態」が良好なほど「サービス効果」が高かった。
   以上の分析結果から、全体的に地域包括支援センター相談員の実践自己評価よりもサービス利用する利用者の満足度の方が高い傾向にあり、利用者が相談員の仕事ぶりや態度に満足していることがうかがえた。また、支援ニーズの低い要支援1グループの方が要支援2グループと比較して評価が高く、ケアマネジメントにより肯定的な傾向が見られた。そして、経済状態が安定している利用者ほど、満足度が高い傾向があった。更に、相談員に関しては、年齢の低い、もしくは健康状態の良い利用者へのケアマネジメントに対する自己評価が高いことが分かった。他方、今回の調査では、サービス情報に関する全般的な評価が低く、実際のサービス効果に関する評価も若干低いことが分かり、さまざまなサービス情報を的確に伝える必要性と、介護予防ケアマネジメントの満足度と実際の効果との差異を検証する必要性が示された。

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