特別養護老人ホームにおけるレジデンシャル・ソーシャルワークの実態について
~1分間タイムスタディ調査による量的評価を試みて~
○ 県立広島大学大学院保健福祉学専攻 石田 博嗣 (会員番号7330)
県立広島大学大学院 住居 広士 (会員番号2099)
県立広島大学大学院 山岡 喜美子 (会員番号2962)
日本ケアワーク研究会 國定 美香 (会員番号4402)
キーワード: 《特別養護老人ホーム》 《レジデンシャルソーシャルワーク》 《1分間タイムスタディ》
転換期にある施設福祉サービスマネジメントに注目して、レジデンシャル・ソーシャルワークの標準化と専門性を明らかにしていくことを目的とし、特別養護老人ホームでソーシャルワークを担う生活相談員と計画担当支援専門員の業務実態を時間という量的尺度から検証する。
2.研究の視点および方法研究の方法として、自計式タイムスタディ調査を実施した。調査は、特別養護老人ホーム8施設の生活相談員と計画担当支援専門員を対象とし、調査日数は、時間外業務を含む連続2日間における勤務時間とした。
ソーシャルワーク分類は、(社)日本社会福祉士会 福祉サービスマネジメント研究プロジェクトが開発した「レジデンシャル・ソーシャルワークの評価の指標」14項目と、2008年に実施した予備調査の結果を基にコードを構築した。
コードは、評価の指標14項目に「間接業務」と「その他」を加えた16項目を大分類に、大分類毎に「その他」を加えた2~9つの細項目化した106項目を中分類に、中分類毎に「準備」「実施」「記録・後片付け」を加えた285を小分類に設定し、この度の調査では、
「大分類」における記述統計からソーシャルワークの実態を検証した。
事前に施設長と調査協力者に対し、調査の趣旨、および個人や施設が特定されないよう個人情報の保護に努めることを説明した。なお、回収した調査メモは、数字のみの処理で分析を行い、匿名性を守る。
4.研 究 結 果1)調査協力者の概要と調査時間(分)
特別養護老人ホーム8施設における調査協力者は、生活相談員7名と計画担当支援専門員17名の計24名であった。総調査時間は25409.8分(時間外勤務時間を含む)、内、欠損値510分を除く24899.8分を分類し、2日間あたりの平均勤務時間1037.49分の内訳(比率)を求めた。
2)大分類における全ソーシャルワークの2日間平均勤務時間の内訳と比率
2日平均の勤務時間の内訳(比率)では、1位「医療と介護」478.54分(±234.97)46.1%がもっとも多く、続いて2位「間接業務」197.58分(±118.95)19.0%、3位「その他」93.83分(±43.37)9.0%で、上位3項目で全体の74.2%を占めた。さらに、4位「チームマネジメント」89.0分(±82.27分)8.6%、5位「ニーズの把握」32.92分(±38.73)3.2%、6位「施設運営管理等」30.42分(±54.3)2.9%の上位6項目で全体の88.9%を占めた。
3)大分類における全ソーシャルワークの2日間平均発生回数の順位
2日間の平均発生回数では、1位「医療と介護」92.54回がもっとも多く、1項目で全
体の76.5%を占めた。続く2位「間接業務」10.83回、3位「その他」4.08回の上位3項
目で全体の88.8%、4位「チームマネジメント」3.79回、5位「ニーズの把握」2.13回
の上位6項目で全体の95.3%を占めた。
4)大分類における全ソーシャルワークの1回あたりの平均時間(分)の順位
1回あたりの平均時間は、1位「施設運営管理等」35.51分(±24.75)がもっとも長く、
続く2位「職員研修」30.63分(20.85±)、3位「権利養護」28.33分の上位3項目で全体
の27.2%を占めた。さらに、4位「契約」27.99分(±15.40)、5位「ケアプラン」26.48
分(±14.16)、6位「その他」26.47分(±13.71)の上位6項目で全体の50.4%、7位「ニ
ーズの把握」24.89分(±30.51)、8位「チームマネジメント」23.42分(±16.48)、9位
「アセスメント」22.50分(±9.01)の上位9項目で全体の70.8%を占めた。
5)大分類における生活相談員と計画担当介護支援専門員の2日間業務時間の順位比較
相談員の順位は、1位「医療と介護」、2位「間接業務」、3位「チームマネジメント」、
4位「その他」、5位「ニーズの把握」、6位「相談支援」、7位「施設運営管理等」、8位
「権利擁護」、9位「地域との連携」、10位「QOLの向上」、11位「ケアプラン」、12位
「アセスメント」、13位「契約」で、「職員研修」「スーパービジョン」「苦情解決」は分類
されなかった。計画担当介護支援専門員の順位では、1位「医療と介護」、2位「間接業務」、
3位「その他」、4位「チームマネジメント」、5位「ニーズの把握」、6位「施設運営管理
等」、7位「ケアプラン」、8位「QOLの向上」、9位「相談支援」、10位「契約」、11位
「職員研修」、12位「地域との連携」、13位「苦情解決」、14位「アセスメント」で、「ス
ーパービジョン」「権利擁護」は分類されなかった。
結果、全ソーシャルワークの実態として、利用者ニーズの把握と施設外・内の各関係職種との連携・調整から、利用者へサービス提供を行うための環境(人的・物的等)を整える業務に多く関与しているという傾向があるものと考える。
参考文献
1)(社)日本社会福祉士会 福祉サービスマネジメント研究プロジェクト『施設福祉マネジメント研究報告書』2005
2)住居広士『介護保険における介護サービスの標準化と専門性』大学教育出版(2007)
3)石田博嗣、住居広士他『老人福祉施設における相談員業務の実態について』介護福祉研究第16巻第1号2008