超高齢社会における高齢者の生活を支えるボランティアネットワークの
構築に関する検討
○ 横浜市立大学医学部看護学科 河原 智江 (会員番号7266)
稲城市福祉部 石田 光広 (会員番号4511)
キーワード: 《高齢者保健福祉》 《地域福祉》 《ボランティアネットワーク》
わが国の高齢者を取り巻く状況は、①高齢化に伴う要介護高齢者及び支援が必要な高齢者の増加、②核家族化の進行に伴う家族による介護機能の低下、③都市化の進展によるコミュニティの希薄化などの進行している。
これらの状況は、年々深刻な状態となっており、例えば、高齢者の孤独死などはどの地域にも起こりうることであり、それを未然に防止するためには、身近な地域の中で高齢者の生活を支えるしくみをつくることが急務の課題となっている。
このようなことから、高齢者の見守りネットワーク事業などが行われ一定の成果を挙げるなど、地域においては、ボランティアネットワークについてさまざまな取り組みが行われている。しかしながら、これらの活動を担う人材は、あらゆる年代の住民が担うというよりも、限られた年代、しかも、高齢の固定層が役割を担っていることが多い。
超高齢社会という現状を踏まえたとき、地域住民の中でもより若年層、特に次世代を担う子どもたちのボランティアネットワークを検討する必要があると考える。
本研究では、高齢者に対する中学生のボランティアネットワークの構築の可能性について整理するとともに、新しい共助システムについて検討することを目的とした。
1)研究の視点
これまでも中学生のボランティアについては、多くの活動が行われているが、中学生が生活する地域において、中学生がボランティアを行うことができる、あるいは、ボランテイアを継続していくことができる可能性について検討する。
2)研究の方法
<対象>
ボランティア活動に参加した経験のあるA市中学生23名及びB市中学生20名
<研究期間>
平成20年8月~9月
<方法>
Ⅰ)高齢者のイメージ、Ⅱ)高齢者に対して何ができるかということについて、対象者個々にアンケート(カードに記入)を実施し、その結果をKJ法により分類した後に3~4グループに分かれてフォーカスグループ・インタビューを行った。
アンケート及びインタビューの実施にあたっては、十分な説明を行い、文書にて同意を取得した後に実施した。また、A市及びB市については、当該自治体に規定されている個人情報の保護等の内容を踏まえ、研究の実施及び公表等について事前に文書により了承を得た。
4.研 究 結 果1)高齢者のイメージについて
高齢者のイメージとしては、34項目計104件が提出され、①心身(外見)に関すること、②経験・知恵に関すること、③おしゃべり・話に関すること、④接してみた印象に関すること、⑤その他の5つにカテゴリー化された。
2)高齢者に対して何ができるかということについて
高齢者に対して何ができるかということとしては、28項目59件が提出され、①声かけ、②日常生活のお手伝い、③話をきくこと、④何かを一緒に行うこと、⑤会いに行くこと⑥その他の6つにカテゴリー化された。
3)高齢者に対する中学生のボランティアの可能性
(1)高齢者に対しては、プラスのイメージが多く、これは日常的に高齢者に接する機会があったり、高齢者を身近に感じる経験があるためではないかと考えられた。
(2)高齢者に対して何ができるかということについては、高齢者に対するイメージや接した印象をもとに自分たちができそうなことを具体的に考えることができていた。
(3)中学生が、「できそうだと思っていること」は、高齢者の生活を支える基本的なことが多いことから、中学生が高齢者の生活を支えるしくみに参画することは有効であると考えられた。