民生委員児童委員による地域包括支援センターの評価
-周知度、活用の有無と高齢者人口、担当地区数との関係-
東京福祉大学大学院社会福祉学研究科博士後期課程 中島 眞由美 (会員番号7455)
キーワード: 《地域包括支援センター》 《評価》 《民生委員》
平成18年の介護保険法改正で地域包括支援センター(以下「地域包括」)が位置づいて3年が経過した。地域包括は、
保健師及び経験を積んだ看護師、社会福祉士、主任介護支援専門員の三職種を配置し、より身近な地域で高齢者の相談に
ワンストップで応じる機関として平成20年度の調査では、全国に3976ヵ所が設置されている。
地域包括の運営にあたっては、全国的におおよそ介護給付費の1.5%が投じられており、費用対効果の点からも、地域
包括がその理念である高齢者の自立と尊厳を支える機関として機能することが期待されている。そこで本研究では、民生
委員が評価する地域包括の周知度、活用状況と地域包括の担当地区数、高齢者人口の関係を知ることを目的とする。
A市(平成21年3月末、高齢者人口98751人、高齢化率23.6%)は、平成18年4月に高齢者人口3000人以上の地域包括を
Ⅰ型、3000人未満をⅡ型とし、32ヵ所の地域包括を設置した。地域包括の評価は、運営協議会評価委員会において事業評価
(アウトプット、アウトカム、プロセス)、活動評価、地域住民による評価を試行的に実施している。
地域包括が今後、地域で確かな資源となるには、まず、地域の人々に認知され、個別の相談対応だけでなく関係団体等
と連携し地域包括ケアを推進していくことが大切である。 本研究では、①民生委員が評価する地域包括の周知度、活用の
満足度、活用の内容及び期待すること、②活用されている地域包括と活用されていない地域包括で担当地区数及び高齢者人
口、地域包括の類型、周知度で差があるか、統計ソフトSPSSを使用し分析した。
(1)対象:A市の民生委員児童委員877人、回収数 754人、回収率86.0%
(2)方法:民生委員地区会長会議で趣旨を説明し、地区会長より各民生委員に手渡ししてもらい、自己記入してもらった
ものを郵送または持参で回収した。
(3)期間:平成20年10月15日~10月30日
(4)調査項目:周知度、活用の有無、活用の内容、満足度、期待すること等
個人情報は厳守し、調査票の回収及び集計にあたっては個人が特定しないよう、また調査結果が地域包括の不利益に ならないよう配慮した。
4.研 究 結 果(1)地域包括の周知度
地域包括の周知度について5件法でたずねたところ、無回答を除く736人の結果は表1のとおりである。「よく知られて いる」を5点とし点数化したところ、市全体の平均値は3.11点、一番低い地域包括で2.23点、一番高い地域包括で4.08点だ
った。周知度と担当地区数、高齢者人口との関係をみたとところ、担当地区数はPearsonの相関係数.078で5%の水準で有意 な相関関係、高齢者人口はPearsonの相関係数.085で1%の水準で有意な相関関係がみられた。
(2)地域包括の活用と満足度
活用したことがあると答えた493人(65.4%)に満足度を5件法でたずねたところ、無回答を除く449人の結果は表2のと おりである。
(3)地域包括の活用と担当地区数、高齢者人口、周知度との関係 活用の有無で高齢者人口の平均値に差があるかみた ところ0.1%の水準で有意な差がみられた。次に担当地区数の平均値に差があるかみたところ0.1%の水準で有意な差がみ られた。
周知度の平均値に差があるかみたところ、0.1%の水準で有意な差がみられた。
(4)地域包括の類型と活用の関係
Ⅰ型とⅡ型で地域包括の活用の有無に差があるかみたところ0.1%の水準で有意な差がみられた。(χ2(1,N=741)=12263, P<0.01)
(5)活用した内容及び今後、期待する業務 活用内容は、高齢者福祉サービス294人と一番多く、次いで介護予防226人、
認知症ケア172人だった。今後期待する業務は、高齢者福祉サービスが379人と一番多く、次いで認知症ケア304人、施設入所
297人だった。
(5)まとめ
民生委員の65%が「地域包括が地域住民に知られていると思う」と評価し、地域包括を活用した民生委員の95%が
「満足した」と答えている。一方で、周知度が高齢者人口や担当地区数と関係があり、活用の有無が高齢者人口、担当地
区数、周知度、地域包括の類型により差があることがわかった。本研究は、あくまで民生委員による評価であるが、今後
、事業評価とあわせて、地域住民が活用しやすい適正な規模があるのか検討を進めたい。