自由研究発表障害(児)者福祉9  金 英淑

在宅障害者事例管理の欲求査定の正確度向上のための査定道具開発と
  欲求抽出アルゴリズム過程研究

三育大学  金 英淑 (韓国社会福祉学会会員)
キーワード: 《在宅障害者》 《欲求抽出アルゴリズム》 《データマイニング》

1.研 究 目 的

本研究の目的は、在宅障害者の体系的査定の可能な道具の開発と、その道具を通じて、在宅障害者の実際欲求を客観的に確かめようとするものである。欲求を確かめる方法は、データマイニングの意思決定ツリー分析技法を活用することであり、欲求査定にての欲求抽出の経路をアルゴリズムで構成して、事例管理実践過程での欲求査定の正確性を高めることである。

2.研究の視点および方法

2006年6月から10月までの約5ヵ月間、在宅障害者の欲求査定のための道具が開発され、開発過程は、道具構成段階とアルゴリズム構造構成段階に分けて行われた。
 本道具の開発のために、学界経歴10年以上の研究責任者と障害者福祉現場への経歴8年次以上の実務者、関連分野の博士過程の研究員と障害者自立生活運動家などの全部6人で構成された。道具開発のための前提条件としては、障害者の身体的、心理的、社会・環境的側面を全部査定できる統合的道具として構成して(? 英淑外、2007)、個人の主観的な訴えを逃さない道具の構成に焦点を置いた。最後には、個人の潜勢力を探し出し、問題状況を最小化させるストレングス視点が含まれた質問項目で構成することを重点として開発した。
 先ず、質問項目構成のために国内障害者福祉機関から活用されている査定道具を収集・分析して、その他にも障害者の査定尺度として活用されるCAN、BCC、QLMI、韓国在宅老人査定道具などを含め、道具構成として活用した。
 特に、本査定道具に新しく度入された主観的訴えおよびストレングス項目と、アルゴリズム構造を構成するための欲求目録は、フォーカス集団を活用して開発した。フォーカス集団に参加した対象は、在宅障害者に接する機会の多い保護者と介護者で構成した。主観的訴えと欲求項目を開発するために、フォーカス集団は約2時間ずつ全部4回の会合を持って、その進行方式は、一人の司会者の質問に自由に答える形式であった。この会合で集められた内容は、参加者たちの同意を得て録取して、録取された内容を中心として、在宅障害者の主観的訴え、ストレングス、欲求と仕分けて整理した。このような過程を通じて構成された査定道具は、その妥当性を認められるために、現場実務者と専門家を対象で、検証過程を行って、主観的訴えとストレングス、欲求の項目については、ADL及びIADL尺度を活用してあり、統計的に基準関連妥当度を<表3>のとおり検証した。
 上記の過程を通じて、全部13個の下位領域を<表2>のとおり構成して、各領域は、基本情報と主観的訴え、介護および補装具、障害の原因、生活満足度、住居環境、リハビリテーション状態、ADL及びIADL、社会的支持、看護および処置、生活習慣、ストレングスとADL、IADL社会的支持、看護、生活習慣と各項目の手助け可否をチェックする査定質問項目を構成してあり、本道具の内的信頼度(Cronbach's Alpha)の値は‹表2›のとおりである。
 二番目の段階であるアルゴリズム構成は、開発された在宅障害者査定道具を活用して、2006年10月一ヵ月間、韓国障害者福祉振興会と三育大學校が共同に遂行した在宅障害者ケアマネジメント示範事業の対象の在宅障害者200人の状態と欲求を調べて構成した。
 この研究にての独立変数は、<表2>の項目から欲求項目を除いた12個の下位領域であり、従属変数は「家事支援必要」、「活動補助サービス」、「意思疎通支援」、「運動処方必要」等の17個の障害者の欲求を「非常にそう思う」、「そう思う」、「普通だと思う」、「そうではないと思う」の4点尺度で活用した。

3.倫理的配慮

郵便調査の際、調査対象者への協力依頼文書を通じて、協力しがたい場合には、こたえなくても良いという点と、回収されたデータは統計的に処理し、個人を特定できないという点を説明した。協力を得た場合には、調査表を無記名で返信用の封筒に入れて、返送するように、依頼した。以上の手続きを通じた本研究にあって、倫理的な問題点はないと判断した。

4.研 究 結 果

一番目、障害者の在宅保護のためには、多様な環境の変化が要求とされる中、在宅障害者の状態、即ち欲求を正確に判断し、サービスを提供するのが効率的である。従って、欲求を正確に判断するための先行条件として、身体、心理、社会・環境などの多次元的状態を把握できる本道具の開発は、その意味がある。
 二番目、本道具にては、障害者のストレングス接近のため、査定項目に具体的にストレングス項目を入れた。このような試みは、事例管理者たちの視角をストレングス視点へと導く基盤として働くことであり、潜在されたストレングスの発見は、クライアントの問題点を相殺させる役割をすることである。
 三番目、本道具は、従来の道具に比べて、査定質問項目が多いのが短所と判断されるが、上記で記したとおり、多次元的状態を把握できる統合的査定道具として、活用できる長所の他にも、事例管理接近にて、多学制的接近を構成する要因として、働くことが出来る。即ち、従来には心理的、社会・環境的接近に偏った査定であるが、医療的側面を統合して、医療専門家と共に査定して介入できる視角を提供することで、これからの社会福祉実践現場での多学制的接近を活性化させる基盤となることが出来る。
 四番目、本研究は、福祉サービス対象者の欲求の決定と選択にあって、標準化した欲求抽出パターンを研究することによって、客観的な欲求決定の基準を提示している。欲求抽出アルゴリズムは、利用者の訴えが即ち欲求だという非科学的認識を改善できる余地を与えている。利用者の欲求は、訴えまたは他の状況に対する一対一の直接的関係によるものではなく、利用者の様々な訴えと多様な状況が、If、and、orまたはnorの条件によって、決まられることを意味する。即ち、効率的に利用者の欲求を決めるために、利用者の多様な査定情報の中に隠されているパターンを探し出し、定義することで、アルゴリズムを構成している(? 英淑外、2008から再引用)。
 五番目、本研究は、サービス利用者の欲求を訴えと一般的な査定情報を通じて、明確に見つけ出す方法を提示している。今まで社会福祉サービスのための障害者の欲求は、機能的、心理・社会的、環境的条件によって決定されると知られてきたが、欲求に影響を及ぼす個人的下位要素に対した科学的構造や根拠は提示されなかった。しかし、本研究のアルゴリズムを通じ、障害者の欲求を定義する意思決定パターンを通じて、欲求に影響を及ぼす個人的下位要素としての査定情報と訴え事項を見つけ出すことにより、サービス提供計画のための基礎的資料を提示することが出来、実際的な問題解決のための科学的方案を提示する根拠となれる。
 六番目、このような欲求抽出構造は、事例管理のための電算化過程の構成となれる。このような電算化を通じて、行政的支援だけではなく、地域社会ネットワークを構成することによって、実時間でクライアントの情報を交換し、確かめることが出来る。その外にも、社会福祉士がクライアントの欲求を導き出す意思決定過程にも有用に活用されられる。
 七番目、本研究は、障害者の分野に新しいパラダイムとして登場したICFの観点を活用して、道具開発と欲求のアルゴリズムを構成したが、これは理論と実践現場の接触点を見つけ出す役割をしたという側面で、学問的意義を持っている。
 最後に、本研究は、次のような限界点を持っている。
 障害者の欲求抽出構造を見るこの研究では、データサンプリングでの地域的限界を外れなかった点と、非確率サンプリングが適用されて外的妥当度を阻害しているから、全体の在宅障害者に一般化するのに限界がある。このような限界については、事例管理に関する情報の持続的な収集と電算化過程を通じて、欲求抽出アルゴリズムの危険推定値を低め、欲求抽出の外的妥当度を高めることに持続的な努力をすることである。

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