自由研究発表障害(児)者福祉9  寺島 正博

知的障害者グループホーム従事者の専門性構築の要因に関する研究
-入所施設従事者とのアンケート調査分析から-

昭和女子大学大学院 博士後期課程  寺島 正博(会員番号6740)
キーワード: 《知的障害者グループホーム》 《レジデンシャルワーク》 《専門性》

1.研 究 目 的

2007(平成19)年12月に障害者施策推進本部が決定した重点施策実施5か年計画では、共同生活援助事業・共同生活介護事業(以下、グループホーム;GH)の利用者数を、平成19年度実績の約4.5万人から、平成23年度には倍増計画ともいえる約8.0万人の目標を掲げた。現状ではこの目標に「地域移行」も拍車を掛けることとなり、急速にGHは増加の一途を辿っているものである。一方で、2009(平成21)年4月1日より障害者自立支援法は、施行後初となる障害者福祉サービス報酬を改定し、全体で5.1%にも及ぶ引き上げを行った。この改定の基本的な考え方として5項目が挙げられ、なかでも「良質な人材の確保」については、福祉・介護人材の処遇改善を進めることが必要であるとして、専門性のある人材の評価を高めること等の狙いから、社会福祉士などの国家資格保有者や常勤従事者割合等を対象とした「福祉専門職員配置等加算」が新たに創設され、ここに我が国が示す福祉の専門性に対する位置づけの一端を垣間見ることが出来る。
 一般に誰もが住み慣れた家庭あるいは地域を基盤に快適な生活空間を求め、環境の改善を図り適応関係(Adjustment relation)の構築に努めている。このことは、少人数制と地域性を伴ったGHの利用者にあっても当然のこととなる。しかし、筆者のこれまでの世話人としての経験から、他の利用者などとの共同生活によって規制がなされていく側面、従事者の支援の基に生活が構築されている側面、地域社会との密接な環境であるからこその側面等によって、利用者が症状の悪化を引き起こしてしまうケースや、さらにはGHを去ってしまうケースまであった。
 以上を踏まえ、GHの利用者が快適に暮らすことのできる環境実現のためには、国家資格保持者や常勤従事者の有無による尺度に留まるものではなく、そこにはGH独自の視点を持った従事者の処遇能力が求められ、さらにはGHにおける社会福祉実践の専門性という検討の課題が存在している。そのため本研究においては、GHのレジデンシャルワークに焦点を置き、従来からの旧知的障害者更生施設従事者・旧知的障害者授産施設従事者・施設入所支援を行う施設(以下、入所施設)従事者において構築されてきたレジデンシャルワークとの相違な実践形態を明らかなものとし、GHの処遇の枠組み(内容)と条件を検討し、そこに発生する関係性についての構造を明確なものとすることを目的とした。なお、ここでいう従事者とは、直接処遇者を意味するものである。

2.研究の視点および方法

調査は、平成21年2月末現在でWAMNETに登録されている全国の入所施設1,365箇所とGH8,201箇所を母集団とする郵送によるアンケート調査を計画し、サンプルサイズは信頼係数95%の母平均値推定を保つため、既存の調査結果を基に入所施設では悉皆調査を、GHにおいては層化抽出法(比例抽出法)により3,928箇所への発送を行った。その結果、入所施設では695名(回収率51.10%)、GHでは1,024名(回収率26.98%)の回答があった(無回答・住所不明による戻り等があるため回収率は異なる)。
 質問項目においては、社会福祉専門職研究に多大な功績をあげてきた秋山智久による調査から、専門性を構成する三要素(知識・技術・価値)を基盤に日常生活場面に関する質問と、従事者の意識に関する質問を設定した。

3.倫理的配慮

対象者には、書面において調査目的を明確に記載し、また本研究以外には使用しない旨も併記した。調査結果については、統計的に処理を進め施設名や個人名が特定されることのないよう配慮を行った。

4.研 究 結 果

アンケート調査の信頼性と妥当性による検討の上、入所施設従事者・GH従事者のそれぞれに、Grasp尺度、Posture尺度、Support尺度としての共通因子が生成された。Grasp尺度としては、第1因子の「危険シグナルのGrasp」、第2因子の「意欲のGrasp」、第3因子の「信頼のGrasp」の計3因子による下位尺度8項目から編成され、Posture尺度としては、第1因子の「取組みへのPosture」、第2因子の「知識へのPosture」、第3因子の「スキルのPosture」の計3因子による下位尺度15項目から編成された。さらにSupport尺度としては、第1因子の「心理的Support」、第2因子の「生活上のSupport」、第3因子の「社会的Support」の計3因子による下位尺度20項目から編成された。
 分析結果、因子の相違によりGH従事者と入所施設従事者による日常生活場面と従事者の意識においては、有意な基にGH従事者が入所施設従事者よりも高い割合を示すものとなった。またこのことの要因に、GH従事者の年齢層等による関与性が明らかなものとなった。

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