自由研究発表障害(児)者福祉8  田中 智子

知的障害者の「暮らしの場」としてのグループホームの機能・役割
-グループホームの実態調査・職員の業務調査を通じての考察-

○ 佛教大学  田中 智子(会員番号5114)
佛教大学大学院  中野 加奈子(会員番号7013)
キーワード: 《知的障害者》 《暮らしの場》 《グループホームの機能・役割》

1.研 究 目 的

近年、成人障害者の暮らしを考える上で、「地域生活」特にグループホーム・ケアホームへ寄せられる期待は実践的にも政策的にも高い。しかし、「地域生活」で追求されるべき暮らしの有り様やそこで求められる支援の専門性については、十分な検討はなされてはいない。その結果、グループホームでは、障害の程度や年齢なども含めた利用者像やそこにおける支援も多様化している現状がある一方で、支援体制や支援の専門性の確立はなされていない。
 そこで、本研究では、知的障害者の「暮らしの場」について政策的位置づけを歴史的に概観するとともに、先行研究に基づく「暮らしの場」の在り方についての理論的整理を試みる。
 そのうえで、現状のグループホームの経営・運営状況、職員の雇用状況、業務実態を調査し、グループホームが成人期の知的障害者の暮らしを支えるためにどのような機能を持ち合わせているのか、そこで展開されている支援はどのようなものであるかということを考察する。
 それらを基に、成人期の知的障害者における豊かな暮らしを保障するためには、グループホーム・ケアホームはどのような機能を持ち合わせなければならないのか、またそこで提供される支援にはどのような専門性が求められるのかということの検討を行なう。

2.研究の視点および方法

・成人期障害者の暮らしに関して、資料を基に政策的意図を考察する。
 ・A県の知的障害者のグループホームの管理者に事前に調査票を送付し、利用者の状況や、運営体制、支援の状況などについて記入していただき、それを基に後に詳細なヒヤリング調査を実施した。(9施設から回収)
 ・グループホームで働く職員の業務内容を把握し、GHCHを運営するうえで必要とされる業務全般を明らかにすること、また勤務形態(正規・非正規・パート)や役職による業務内容の違いを明らかにする目的で職員の業務に関するタイムスタディ調査を実施した。
 *上記二つの調査は、2008年2月から7月にかけて実施したものである。(195名から回収)

3.倫理的配慮

アンケート調査に際しては、研究の趣旨を説明し、調査対象者の同意を得た。調査票は全て無記名とし、結果は研究目的のみに使用され、かつ統計的に処理を行ない、開示に関しては事業所・個人を特定できるような情報は開示せず、どのような情報を開示するかについては、本人にも明示した上で了解を取った。

4.研 究 結 果

二つの調査を通じて、明らかになった点として、第一に、グループホームにおける利用者像の多様化していること、特に、障害程度や年齢に関して、グループホームごとに大きく異なる実態にあることが明らかになった。
 第二に、それらグループホームを支える財政などの経営基盤や、職員配置・体制などの運営基盤などについても課題があることが明らかになった。
 第三に、グループホームの職員の業務のタイムスタディ調査を通じて、職員の業務は、利用者に対する直接援助、家事的要素の間接援助が中心であり、職員は、コミュニケーションや自立につながる支援などが不足しているという実感を抱いていることが明らかになった。
 以上のことを踏まえ、現在のグループホームが成人期の知的障害者の「暮らしの場」としてどのような機能・役割を担っているのか、そこで求められる支援の専門性とはどのようなものであるのかという考察を行なう。

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