自由研究発表障害(児)者福祉6  小池 隆生

障害のある人の「コミュニティ型就労支援」の条件と課題
- 東北地方A市における実践に即して -

○ 岩手県立大学  小池 隆生(会員番号4559)
岩手県立大学  佐藤 嘉夫(会員番号0385)
宮古圏域障害者支援センター  湊  直司(会員番号7436)
キーワード: 《コミュニティ》 《就労支援》 《自立支援》

1.研 究 目 的

障害のある人の就労支援に際して、人々が実際に生活を営んでいる地域の中に、そのための条件としてはどのようなものが存在しているのだろうか。その多くは、障害のある人の就労支援に「役立つ」のかどうか気づかれぬまま潜在化していることが多いのではないだろうか。障害のある人の就労支援が効果をみるための条件とは何か、障害者自立支援法により障害のある人の就労支援が抜本的に強化されて以後、なおこうしたことが明らかになるには様々な地域における多様な実践の模索と、研究の進展を待たなければならない。
  本報告は、施設型の福祉的就労、一般雇用のいずれもが限界を有し、行き詰まっている中で、地域の人的、物的資源を統合し、様々な就労困難を抱えた人、とりわけ障害のある人と専門的援助者、地域の人々が交じり合って、地域の中から多様な就労の形ときっかけを作り出すことによってコミュニティに根ざした新たな就労を開発し、支援していくための条件と可能性を実証的、実験的に探っている実践に即して、とりわけ障害のある人の「コミュニティ型就労支援」の条件を明らかにし、ひいてはありうべき「就労支援」を検討する素材ならびに示唆となる論点を提示することを課題とするものである。

2.研究の視点および方法

本報告では、東北地方の特定地域における「就労支援」の実践に即して、「コミュニティ型就労支援」の諸条件を検討する。その際、本報告は、とりわけ、○働き方の多様性の今日的意味、○働くことにつながる「能力」とは何か、○就労に結びつく生活力とは何か、○社会的諸能力の形成、といった諸点について、理論的検討を要するものとして留意しつつ検証を進めたい。さらに、もう一方で、制度・政策的課題として、○統合的・総合的ケアならびに○コミュニティへの流れ、すなわち・施設と居宅の統合の現状、・地域密着型サービスの進展状況、・地域資源の活用と地域活性化の現状、および ○権限の自治体、「地域」への委譲の具体的有り様についても、「コミュニティ型就労支援」の鍵として目配りしつつ研究を進める必要がある。
  上記の諸点に留意しつつ、採用する方法としては、「コミュニティ型就労支援」の具体的条件を検討するための社会基盤(地域における労働市場のありよう等の経済条件や社会資源の分布状況)を既存のドキュメントやヒアリングなどの分析を通じて明らかにし、さらに障害のある人の就労ニーズ調査の分析結果から、諸条件とニーズの双方から「コミュニティ型就労」の現実的な条件を検討する。

3.倫理的配慮

特に就労ニーズ調査に際しては、調査対象者が特定されることがないように、調査協力団体との協議のうえ慎重に実施し、データも匿名性が確保される形で集計分析を行い、管理も厳格に実施することで、研究倫理に十分配慮している。

4.研 究 結 果

上記の研究プロセスを経ることで、障害のある人個々人に対して個別の支援の重要性のみならず、特に「コミュニティ」という考え方・枠組を前面に出すことで、それまでとは異なる障害のある人の就労支援の新しい展開が具体的に構想しうることが明らかとなった。報告において詳述する。

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