自由研究発表障害(児)者福祉3  東 公美

医療観察法におけるソーシャルワークの現状・課題・ありかたについて
-ソーシャルワーカー等に対する調査の結果からみられるもの-

東 公美(会員番号4545)
キーワード: 《医療観察法》 《精神障害者》 《精神保健福祉士》

1.研 究 目 的

心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者医療及び観察に関する法律(以下、医療観察法とする)に携わる精神保健福祉士等 のソーシャルワーカーに対して調査を行うことにより、医療観察法におけるソーシャルワーク支援システムの現状と課題を明らかに し、医療観察法における今後のより良いソーシャルワーク実践のためのありかたの一端を提示する。

2.研究の視点および方法

医療観察法が2005年7月15日に施行され、約4年が経過した。同法施行後から現在にかけて、同法の運用についての論文をはじめ とする研究は、医療・法律等の分野と比較すると、社会福祉やソーシャルワーク分野の視点からの研究(論文)は多いとは言い難い。
  本研究者は、精神科病院等のソーシャルワーカー等を経て、2006年から大阪地方裁判所の精神保健参与員(精神保健福祉士) として勤務し、現在に至っている。地方裁判所で療観察法の業務に携わる中で、対象者(医療観察法の対象となる精神障害者)に 対して、より早く、より適切なソーシャルワーク等の医療保健サービスを提供していれば、殺人等の重大犯罪に至っていない可能性 があることが判明してきた。
  そこで本研究においては、医療観察法の業務に携わる精神保健福祉士等のソーシャルワーカーに対して調査を行った。
  調査対象は、①精神保健フォーラム参加者、②大阪精神保健福祉士協会精神保健参与員自主的勉強会参加者、③精神保健判定医等 養成研修会大阪会場受講者、などである。調査方法は、①アンケート用紙に記述して回収する量的調査と、②調査に同意して下さった方に 本研究者(精神保健福祉士)が面接による聞き取りでの質的調査、の2種類である。調査内容をもとにPASW等のコンピューターソフト等を 使用して分析を行った。量的調査の分析には、グラウンデッド・セオリー・アプローチを主として用いた。
  尚、質問紙や面接調査における質問項目の妥当性の検討について、作成した質問紙の内容妥当性を検討するため,複数の精神保健 福祉士と共に、質問項目の内容について精錬を行った。また、意味の不明瞭な質問文や回答しづらい点などについて点検するため、 複数の精神保健福祉士にプレテストを実施した。

3.倫理的配慮

量的調査・質的調査共に、調査対象母集団の中から本研究に同意を得た方を対象に調査を行った。調査の際には倫理的配慮として、 調査対象者に対して、研究の目的、方法、秘密保持について、文書及び口頭での説明を行った。また、ヒアリング内容をテープレコーダー 等で録音することは調査対象者の承認を得た上で行った。加えて、精神保健福祉士等の調査対象者と医療観察法の対象者(精神障害者) の個人が特定できないよう、個人情報の管理に留意した。そして、アンケート回答用紙やインタビューのテープレコーダー等の管理を 厳重に行った。
  また、過去の先行研究を参考にしながらも、時代や地域性等の違い等を認識した上で、本研究での独自性を心がけた。
  その他については、ヘルシンキ宣言等を念頭におきながら、日本社会福祉学会の定める研究倫理指針を遵守した。

4.研 究 結 果

①精神障害者に対するソーシャルワーク等の精神保健福祉サービスの内容は、サービス対象者を医療観察法対象者と、それ以外の者 に分けて比較した場合、ほとんど差がみられない。
  しかし、②医療観察法施行後、約4年が経過しているため、先駆的なソーシャルワーク実践を行っている機関等や地域が確認された。
  ③②における先駆的実践と、アンケートによる量的調査、面接による質的調査を総合的に分析し、本発表では、個人情報保護等に 配慮した範囲内でこの結果を発表したい。

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