精神障害者に対する許容度に関する検討
北星学園大学 豊村 和真 (会員番号0049)
キーワード: 《障害者》 《意識》 《許容度》
ある個人がどの集団(精神障害者,健常者)に属しているかということと,その個人の行動・状態とが独立であるか どうかを検討するために,同じ行動・状態についてその個人が精神障害者の場合と健常者の場合の許容度の違いについて 調査する。その際,以下の4つの作業仮説をもうけた。①学部間,また学年の差がみられる。すなわち,福祉学部1,2 年生(福祉1-2年,福祉3-4年,他学部)。②男性よりも女性のほうが,許容度は高い。③健常者よりも精神障害者 のほうが,許容度が高い。④精神障害者であっても健常者であっても,許容されやすい行動・状態と許容されにくい行動 ・状態の項目は一致する。
2.研究の視点および方法被験者 大学生366名。性別の内訳は男性90名,女性275名,不明1名。学部及び学年別では,福祉学部1.2年212名,福祉学部 3.4年90名,他学部64名であった。
手続き 予備調査により得られた,精神障害者に見られる可能性が高いと大学生が考える状態について,取捨選択し項目を 以下の26にした。
これら26項目について,文末に「障害者」または「健常者」を加え項目1であれば「情緒不安定である障害者」, 「情緒不安定である健常者」のように,障害者と健常者について質問項目を設定した。さらにこれらの項目が自分自身 にどの程度あてはまるかについても聞いた。これらの項目について1~6段階で評定させた。なお記述順序は健常者,障 害者,自分については意図的に順番を変えた。また,これらの評価に精神障害者との接触経験や知識がどのように影響 を与えるかを分析するために,性別,学年,年齢の他に,接触経験知識に関する5項目(「福祉系講義受講経験」,「情 報関心度」,「情報摂取量」,「遭遇頻度」,「接触経験」)の質問を行った。
以上のように作成された質問紙について,大学の講義時間終了後に回答させた。3.倫理的配慮
データの処理に当たっては,個人名を特定できないように配慮した
4.研 究 結 果表2にグループ別分類別許容度を示す。左端の数値は項目番号を表す。枠内の数値は健常者について精神障害者より も許容度が高かった項目を示す。それらの項目は比較的違和感の少ない(得点の高い)穏健な項目であった。一方,精
神障害者に対して健常者よりも許容度の大きな項目は,暴れるなど,違和感の大きな(得点が低い)項目が多かった。
精神障害者>健常者となった有意な項目は,福祉3-4年>福祉1-2年+他学部では項目番号で2,6,12,13,
17,23,25,6の8項目,福祉3-4年>他学部は,5,8,14,22の4項目,福祉1-2年+福祉3-4年>他学部は3の1項
目であった。
なお,以上の結果の一部について豊村(2009),豊村・室田(2009)で発表した。本研究は非学会員の室田理恵氏との
共同研究である
【文献】
豊村(2009)「大学生を対象とした障害者に対する許容度の検討(1)」,日本心理学会第72回大会発表論文集
豊村・室田(2009) 「大学生を対象とした障害者に対する許容度の検討(2)」,日本教育心理学会第51回大会発表論文集