地域生活移行アセスメントの作成とその検討に関する研究(2)
○ 国立のぞみの園 森地 徹 (会員番号5673)
株式会社インターネット総合研究所 水嶌 友昭 (会員番号7627)
キーワード: 《地域生活移行》 《アセスメント》 《知的障害者福祉》
障害者自立支援法の成立により策定されることとなった市町村障害福祉計画の基本指針には「平成23年度末までに現在 の入所施設の入所者の1割以上が地域生活に移行することをめざす、これにあわせて平成23年度末時点の施設入所者数を7% 以上削減することを基本としつつ、地域の実情に応じて目標を設定する」と記載されている。しかし、現実にはこの目標は 達成される状況とはなっていない。この地域生活移行の促進を妨げる要因はいくつかあげることができるが、その1つとし て地域生活移行プロセスが確立されていない点をあげることができる。この地域生活移行プロセスは地域生活移行を目指し た支援や調整を始める段階から始まる。しかし、実際に地域生活移行プロセスに至るには地域生活移行に向けたアセスメン トを行う必要がある。しかし現実には、個別支援計画のためのアセスメントはいくつか作成されているものの、地域生活移 行のためのアセスメントは作成されていない。そこで本研究の目的は、地域生活移行の現状を踏まえて、地域生活移行アセ スメントを作成し、作成した地域生活移行アセスメントの有効性を検討する、こととする。
2.研究の視点および方法平成14年度厚生労働保健福祉総合事業「知的障害者施設における援助システムに関する研究」において作成された 「国立のぞみの園個別支援計画(アセスメント)」を用いて2003年に国立のぞみの園の入所者501名を対象に行われた調査 データにより地域生活移行アセスメントを作成することとする。「国立のぞみの園個別支援計画(アセスメント)」はADL 、健康・安全、社会性、社会生活技能、コミュニケーション、日中活動、社会参加、について全160項目を各項目5段階で 評価するものである。この「国立のぞみの園個別支援計画(アセスメント)」を用いて行った調査データをその後の地域生 活移行群と施設生活継続群に着目して分析を行い、地域生活移行のためのアセスメントを作成する。そして、作成された 地域生活移行アセスメントに地域生活移行群と施設生活継続群のデータをそれぞれ当てはめ、心身機能・身体構造や環境 因子からも地域生活移行アセスメントの内容の検討を行うこととする。
3.倫理的配慮調査データから個人が特定されないように配慮しながら分析を行い、地域生活移行アセスメントを作成した。また あわせて、個人が特定されないように配慮しながら地域生活移行アセスメントの有効性の検討を行った。なお、分析は 日本社会福祉学会研究倫理指針に準拠して行った。
4.研 究 結 果「国立のぞみの園個別支援計画(アセスメント)」で用いた160項目について、重複する項目、回答の分布に偏り がある項目を削除し、数量化3類を用いて分析を行った。ADL、健康・安全、日常生活、社会生活技能からなる18項目 が利用者の特徴を表す項目となることがわかり、これらの18項目を地域生活移行アセスメントとした。地域生活移行群 にこの結果を適用すると、得点分布が高得点層にかたまっていることがわかった。逆に施設生活群では得点分布が高得 点層と低得点層に2分されることがわかった。地域生活移行群と施設生活継続群の高得点群とを比較したところ、施設 生活群の障害程度区分の平均が若干高かったものの、年齢、在籍年数、IQの平均には大きな差は見られなかった。次に 、アセスメント得点が高得点層にあるにも関わらず地域生活移行が果たされていない施設生活継続群についてその要因 を検討したところ、本人が地域生活移行を拒否しているケースは見られなかったものの、保護者の同意が得られないケ ースが60.6%、どちらともいえないを含めると93.9%となっていた。これらのことから、地域生活移行アセスメントにお いて、得点が同じ場合には地域生活移行群も施設生活継続群も心身機能・身体構造上は差が見られなかったが、地域生 活移行群と施設生活継続群とを分ける要因として保護者の同意などの環境因子が影響している傾向があることが分かっ た。そのため、このような環境因子の及ぼす影響に目を向けながら地域生活移行アセスメントを行う必要性が示される 結果となった。