自由研究発表児童福祉3  小暮 健一

学童保育の質のための新たな文書について
 -学童保育の質のための一般的アドバイス-

明星大学大学院  小暮 健一 (会員番号5740)
キーワード: 《養成された職員》 《社会的発達》 《侮辱》

1.研 究 目 的

 日本の学童保育は1997年に児童福祉法に位置づけられた。2007年厚生労働省は学童保育 の指針としての「放課後児童クラブガイドライン」(4項)を発表した。学童保育への需要は高 まり、2008年2月政府は「新待機児ゼロ作戦」をまとめ、この10年間で学童保育の数を3倍のお よそ213万人にして、「質の高い」事業の推進を図るとした。2009年2月の社会保障審議会少子 化対策特別部会第1次報告では次のように述べている。小学生になった後においても、切れ目 なく、生活の場を提供する基盤となっている。両立支援系のサービスとして不可欠なものの一 つとして位置づけるべきである。量の確保、人材の確保、地域格差あること。対象学年、質の 確保でどのような基準の内容をどのような方法で担保していくべきか。国と実態の乖離、指導 員の処遇が厳しいという指摘に対してどのような財政の仕組みをつくるのか。そして、質の確 保を図りながら新たな制度体系における位置づけとして、量的拡大と場所の確保。そのために は、人材の確保が重要。現在勤務年数が短い、処遇が厳しい状況の指摘も踏まえて、財源の確 保、処遇改善を図っていく必要がある。指導員の養成、専門性の向上に向けた研修の強化を図 っていく必要がある。
  現在、日本の学童保育をどのような制度体系をつくっていくべ きなのかが問われている。スウェーデンの学童保育(fritidshem)は、1987年に83項の『学童 保育のための教育プログラム』を作成して学童保育の内容の考えや方法をまとめている。1990 年代後半になると学校と学童保育、就学前教育が統合されて、98年には学校法の中で統一的に 考えられるようになる。2007年に1999年の学童保育ガイドライン(『Allmanna rad med kommentarer for fritidshem』)の改訂版が出され、続いて学童保育の質を検討する文書 『All- manna rad och kommentarer kvalitet i fritishem』(学童保育の質のための一般的ア ドバイスとコメント)出される。この文書は学校との統合後の学童保育の質を問題にしている。 要点としての概要が「スウェーデンにおける学童保育の法制とガイドライン」(太田美幸『学童 保育研究8』2007年11月かもがわ出版)として若干は紹介されている。ここでは、文書の中身に 注目して視点としての内容を取り上げる。

2.研究の視点および方法

 『Allmanna rad och kommentarer kvalitet i fritidshem』 SKOLVERKETS  ALL―MANNA RAD 2007 (学童保育の質のための一般的アドバイスとコメント 2007年40項学校庁)をスウェーデン語から訳してその視点をみる。

3.倫理的配慮

 先行研究として、上記の概要の文献があり、参考として白石淑江『スウェーデン保育 から幼児教育』2009年3月がある。研究倫理指針にのっとり以下の研究結果とする。

4.研 究 結 果

 この文書は2007年に出された学童保育の質(kvalitet)のための勧告(rekommendation) の解説である。日本の学童保育の質の視点として参考となることが含まれている。子どもの 権利条約を基礎として、学童保育職員とコミューンの双方へ向けて活動を発展展開させるた めに解説している。スウェーデンの学童保育の任務は、教育的活動を通じて学校を補完 (komplettera)したり、子どもの有意義な自由時間(meningsfull fritid)を提供したり、 発達を支える。学童保育は学校法とLpo94教育計画によって規定されている。目次は次によ うになっている。「序文 学童保育の質のための一般的アドバイス 概念 学童保育は何を 規定するのか 学童保育の質と説明の一般的アドバイス 前提 管理と指導 事後検討と 評価 職員密度と子ども集団の大きさ、構成 職員の能力 場所と環境 学童保育の中で の働きかけ 学童保育の任務 標準と価値 女子男子を同等に扱うこと 子どもの参加 と影響力 多文化な学童保育 特別な支え 学童保育と家庭で共同する その他の活動と 共同する 参考」以下特徴的な事柄を列挙する。 Skolbarnsomsorgの中にはFritidshem (学童保育所)、Familjedaghem(家庭保育室)、
  Oppenfritidsverksamhet(公開学童 保育活動)がある。質を向上させるための前提として、コミューンが大事である。どのよ うな学童保育を保証するかを明瞭に示し、分割や目標、働きかけに注目して責任を負い、活 動の目標や仕事の日常的な働きかけに精通する。職員密度と子ども集団の大きさ(母国語、部 屋と戸外環境、特別な支えを必要とする子の分け方、在籍時間など)。各コミューンは活動水 準の質の説明を作成すべきである。学童保育の中での働きかけ- 子どもたちの身体的知性 的社会的情緒的発達を支える保育や教育を一つにまとめる。学童保育の教育的指導は学童保 育向上のための重要な要素である。時間的ゆとりをつくることを通じて高い目標の達成のた めの前提をつくる計画づくり、フォローアップ、評価をする。学童保育の活動は、子どもグ ループの中で行なう社会的発達を築く。子どもたちの自尊心や考え方を他の子どもと大人と 調和させて発展させる。大きなグループの場合、困難な関係になり攻撃的な振る舞いが起こる 。教育大学で養成された職員は質の観点から重要である。野外環境は発達や学びのために大き な部分を構成する。指針の全体にわたって男らしさ女らしさを教育的環境のもと平等に扱うこ とを強化した。平等的課題を進め差別待遇と侮辱(krankande)的あつかいを指導している。お やつはくつろいで栄養分ある物を給仕することでよい食物の習慣の基礎にすべきである。異な った文化多言語でも利用できるように働きかける。就学前学校から学童保育への移行を容易に するために就学前学校と共同する、など。

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