自由研究発表所得保障・公的扶助1  伊志嶺 勉

A市におけるホームレスへのソーシャルワーク実践
-ホームレス巡回指導員の業務から-

那覇市役所 健康福祉部 福祉政策課   伊志嶺 勉(会員番号5682)
キーワード: 《ホームレス》 《ホームレス巡回指導員》 《ソーシャルワーク実践》

1.研 究 目 的

ホームレスの自立支援等に関する特別措置法(以下、自立支援法)が2002(平成14)年に施行され、ホームレスの自立の支援等に関する基本方針(以下、基本方針)が2003(平成15)年に定められ、2008(平成20)年に基本方針の見直しがなされ、新たなホームレス対策やホームレス状態になるおそれのある者への支援の必要性が示された。
 厚生労働省によると、全国のホームレス数は平成15年以降、前回調査と比較して全体数は平成19年、20年は減少したが、平成21年はほぼ横ばいとなっている。X県は平成15~20年は増加、平成21年はほぼ横ばいとなっている。しかしながら、A市ではホームレス数が増加している。
  本稿は、A市における2007(平成19)年度までと2008(平成20)年度と比較したホームレス対策事業の変化と、2008(平成20)年4月から伊志嶺がA市役所にホームレス巡回指導員として就職1年ほどではあるが、ホームレス巡回指導員の業務を通して、A市のホームレス対策の現状と課題を明らかにする。

2.研究の視点および方法

本研究は厚生労働省から発表された報告書や先行研究を用いて2007(平成19)年度までと2008(平成20)年度以降のホームレス対策事業の比較と、複数の架空事例を用いて巡回指導員のソーシャルワーク実践について検証し、A市のホームレス対策の現状と課題を述べていく。

3.倫理的配慮

本研究は厚生労働省から発表された報告書や先行研究を用いてA市でのホームレス対策事業の現状を述べるため、日本社会福祉学会研究倫理指針(以下、研究倫理指針)第2-Aを遵守する。また、事例研究で用いる複数の事例はすべて架空のものであるが、研究倫理指針第2-Bに準じて遵守する。

4.研 究 結 果

2007(平成19)年度までと2008(平成20)年度のホームレス対策事業を比較すると、前者までは巡回指導員を配置していなかったため、ホームレス自身が来所したときに生活保護の相談等に対応していたが、後者では前者の内容に加え、巡回相談を行い、ホームレスからの各種の相談に応じるだけでなく、民生委員や市民からの電話や来所による相談や他機関やホームレス支援団体や民生委員などとの連携や相談などに応じている。
 巡回相談を重ねていくうちに、ホームレスからの各種の相談が多くなり、野宿から脱却する(させる)支援を行っていった。6事例をもとにした、A市のホームレスへのソーシャルワーク実践のプロセスは(図1)のようにまとめることができる。
  (図1)A市のホームレスへのソーシャルワーク実践のプロセス       


 X県内でホームレスが利用対象となりうる社会福祉施設が救護施設だけであるが、X県内の2か所の救護施設はほぼ満床状態であり、ホームレスが利用対象となるのは現実的に難しく、ホームレスの居宅確保の支援は、ホームレス支援団体が運営している入居施設を紹介するか、一時的な住居として低廉な宿所を提供することで対応している現状である。
 医療面においても前述したように、X県には無料低額診療所が設置されていないので、入院を要しないが治療や通院が必要な場合でも支払いは全額自己負担となるので、自ずと受診抑制をすることになる。それだけでなく、結核検診なども行われていないので、健康管理や病気の早期発見・早期治療に結びつけることが求められる。

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