自由研究発表国際社会福祉1  包 敏

中国ソーシャルワーク専門職の試験要綱からみる
  日中ソーシャルワーカー国家資格の互換性
-全国助理社会工作師(ジュニアソーシャルワーカー)の試験要項を例に-

広島国際大学  包 敏(会員番号4233)
キーワード: 《ソーシャルワーク専門職》 《国家資格》 《互換性》

1.研 究 目 的

2006年10月12日に中国共産党第16期中央委員会第6回全大会議で採択された「社会主義和諧社会の構築についての若干の重大問題に関する中共中央の決定」に(和諧社会:調和の取れた社会。当時の財政部長(財務大臣)金人慶は「和諧社会」について次のように解釈している。「和」は「禾」に「口」なので、食が満足することである。「諧」は「言」に「皆」なので、言論の自由を認めるということである。すなわち、貧困を脱出し、言論の自由が認められる社会は「和諧社会」というのである)、中国に存在する調和社会に影響する矛盾と問題について主に都市と農村、地域、経済・社会発展が極めて不均衡であり、人口・資源・環境からくる圧力が大きい。就業、社会保障、所得分配、教育、医療、住宅、安全生産、社会治安等の大衆の切実な利益に関係する問題が突出している。体制メカニズムが不十分であり、民主法制が未だ不健全で、一部の社会構成員は誠実・信義に欠け、モラルが規範を失い、一部の指導幹部の素質・能力・作風は新情勢・新任務とマッチせず、腐敗現象が依然として比較的に深刻である。社会に多くの矛盾・問題が蓄積されている現状を率直に指摘している。
  上記の決定の八に共産党が和諧社会構築に対する指導を強化するとの項目に大規模なソーシャルワーク人材チームをつくる。構造が合理で、質がよいソーシャルワーク人材チームをつくることは和諧社会の構築に差し迫った必要であると書いてある。2006年7月20日に中華人民共和国人事部、民政部(厚生労働省)が共同で「社会工作者職業水平暫定規定」(ソーシャルワーカー職業水準暫定規定)と「助理社会工作師、社会工作師職業水平考試弁法」(助理ソーシャルワーカー<Junior Social Worker >、ソーシャルワーカー<Social Worker>、職業水準試験方法)を公布した。これは中国政府がソーシャルワーカーの国家資格の確立を目指す重要な一歩である。2008年6月28日~29日全国で試験要綱、問題、試験時間と試験組織を統一し、助理社会工作師(ジュニアソーシャルワーカー)と社会工作師(ソーシャルワーカー)の二つの国家試験が実施された。全国で試験の申し込み者数は14万人あまりである。そのうち、初級社会工作師と社会工作師はそれぞれ6万あまりと7万人あまりである。 合格ラインは両方とも60点で、初級社会工作師と社会工作師の国家資格取得者数は2万あまりと0.4万人あまりである。初級社会工作師と社会工作師の合格率は30%強と7%弱である。本年も6月に試験を予定している。申込者数は昨年を下回り、9万人あまりとなっている。
  一方、日本は社会福祉士国家試験制度が社会福祉士及び介護福祉士法(昭和62年5月26日法律第30号)により、来年1月に22回目の社会福祉士国家試験を実施する予定である。本研究は中国全国助理社会工作師職業水準試験要項(2007年版)を取り上げ、助理社会工作師(ジュニアソーシャルワーカー)の試験科目である社会工作綜合能力(初級)試験要綱(ソーシャルワーク綜合能力<初級>)と社会工作実務(初級)(ソーシャルワーク実務<初級>)試験要綱の内容を考察することにより、日本と中国のソーシャルワーク国家資格の互換性を検討してみる。

2.研究の視点および方法

助理社会工作師(ジュニアソーシャルワーカー)の試験申し込み用件と試験要綱の内容を取り上げ、具体的な内容を考察する。
  1.助理社会工作師(ジュニアソーシャルワーカー)の国家試験の申し込み用件:①高校または中等教育の学歴を持ち、4年間のソーシャルワーク実務経験を有する。②ソーシャルワーク専攻の3年制大学の学歴を持ち、2年間のソーシャルワーク実務経験を有する。③4年制大学のその年の卒業生(新卒者)である。④他の専攻の3年制大学の学歴をもち、4年間のソーシャルワーク実務経験を有する。⑤他の専攻の4年制大学及びそれ以上の学歴を持ち、2年間のソーシャルワーク実務経験を有する。
  2.試験科目はソーシャルワーク総合能力とソーシャルワーク実務であり、試験形式は選択問題(一択または二択以上)。
  3.ソーシャルワーク総合能力とソーシャルワーク実務の内容。

3.倫理的配慮

本研究では特に倫理的配慮に関する内容はない。

4.研 究 結 果

ジュニアソーシャルワーカーの試験要綱から以下の結果が明らかになった。①ソーシャルワークの目標、価値、倫理と方法論(ケースワーク、グループワークとコミュニティワーク)に関しては一致している部分は多い。②政策及び法規などに関しては国が違うため、制度などが異なる。今後は如何にしてそれを克服するかが国家資格互換性の問題解決の焦点になる。

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