自由研究発表国際社会福祉1  北爪 克洋

異文化を背景とする児童の生活問題に関する一考察

東京成徳大学  北爪 克洋(会員番号3360)
キーワード: 《異文化》 《外国人》 《児童支援》

1.研 究 目 的

「社会福祉士及び介護福祉士法の一部を改正する法律」により、今後、フィリピン、インドネシアといった諸外国から多くの外国人労働者が来日することが考えられる。社会福祉分野における外国人労働者の受け入れについて、社会福祉従事者としての専門性や倫理について各方面から議論や意見はあるものの、既に日本は制度としてそれら外国人を受け入れ、彼らに対し国内での生活基盤を提供することが法定化していることは事実であるといえる。前述したように、専門性等に課題を残しつつも、こういった外国人労働者を受け入れるといった動向は、今後の国際社会において価値があり、且つグローバル化の進む現代において当然の流れであるといっても過言ではない。では日本における外国人労働者の受け入れ状況は如何なるものかというと、外国人登録法の一部改正や、出入国管理及び難民認定法の改正を経て、来日を望む外国人の多くに門戸が開かれるようになってきている。これを受けて、法務省入国管理局による「平成20年度版 出入国管理」によると平成19年には外国人居住者の数は215万人を超え、総人口比1.69%と過去最高になっている。
 一方で日本における外国人居住者についての研究動向をみると、主として労働問題に焦点があてられている。日本において外国人労働者が社会的に問題視されてきたのは、1980年代中頃である(森,2002)。限られた先行研究の中ではあるが、日本在住の外国人を研究対象とすると、明治維新以降の資本主義の発展が背景となり、外国人労働者の受入れを伴ってきた実情から「労働」というキーワードを中心として実態調査をはじめ、研究がなされている。
 では、移住労働者である親達に連れられ、日本で生活する子ども達の生活はいかなるものであるのか。上記の通り、多くの外国人労働者が移住する中で、その親達に連れられ多数の学齢児が来日するようになった。また、親達の国内での定住化に伴い、日本で生まれた子ども達も増加している。文部科学省が実施している「日本語指導が必要な外国人児童生徒の受入れ状況に関する調査」(平成19年度)によると、日本語指導を必要とする外国人児童は25,000人を超え(図1)、日本の公立学校に在籍しつつも、日本語による日常会話の不十分さなどから学習活動や日常生活の支障が生じている者が多くいることが推測できる。また不就学児童を加えるとその数はより多くなると考えられる。
 本研究は、充実が図られつつある在日外国人への対応の中でも、異文化を背景とする児童に焦点を当て、その実態と課題について、ささやかながらその一端を明らかにするとともに、該当児童の学習活動を含めた生活支援に介入するソーシャルワークの必要性と将来的な介入の可能性を探ろうとするものである。今回の報告では、聞き取り調査によって明らかとなった実態を中心に報告を行う。

 
 図1 公立学校に在籍する「日本語指導が必要な外国人児童生徒」数 出典:文部科学省ホームページ

2.研究の視点および方法

T県の一定地区の小学校に在籍する外国籍児童について、その学習状況を視察するとともに教員への聞き取り調査を実施、また他地区において児童へのアンケート調査から学習に対する取り組みと生活上の困難性を明らかにし、その支援について考察を行う。

3.倫理的配慮

本研究を行うにあたり、その調査対象となる学校及びアンケート対象者へは、得られたデータに関する使用方法を明確にし、十分な説明と理解を得ている。

4.結 果 と 考 察

T県M地区における聞き取り調査について
 M地区にある児童数996名のM小学校には21名の外国籍児童が在籍する。該当学校の視察及び聞き取りより明らかとなった点について次のようなことがあげられる。
 ①短期間でほとんどの子どもたちがある程度までは学校生活に適応している。
 ②学習活動参加に困難や不便を抱えた状況の子どもたちがいる。
 ③情緒不安定で学校生活に適応できなくなった子どもたちがいる。
 ④家庭事情、特に親の就労事情に強く影響を受けている子どもたちがいる。
 その他詳細については当日資料を配布する。

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