自由研究発表地域福祉4  長谷川 武史

日常生活におけるRisk
-コミュニティにおけるRisk対処機能の検討-

北星学園大学大学院 長谷川 武史(7118)
キーワード: 《日常生活Risk》 《Risk解析》 《コミュニティ》

1.研 究 目 的

今日の生活には,様々なRisk(発生が不確実であり損失を生じる怖れのある現象や状態)が存在する。その存在が広く一般的に意識できるRiskもあれば、専門家や特定の状況下でなければ意識が出来ない・しないRiskもあり、現代社会においての生活にはあらゆる場面にRiskが存在するといってよい。
 その種々多様なRiskに対応するために、様々なRisk解析が施行されている。しかし、全ての人が全てのRiskに対して十分な判断能力・解決能力を有しているわけではなく、経済状況や社会資源の格差等により,それらの能力は変化する。社会保障機能には,このような個人が被る怖れのあるRiskを分散させる機能(所得の再分配や社会保険制度)を有しているが,その機能に陰りを見せている。その中で、Riskが発生する場でありながらも,社会と個人を繋ぐ存在であるコミュニティが,個人に代わりある程度のRisk対処策を提供することができ、Risk影響の緩衝機能が期待される。
 本研究においては,発生した場合損失のみを生みだすPure Riskを日常生活Riskと規定し、その発生・影響を次元毎に分類し、それらがどのように対応されるのか。コミュニティ内にはどのようにRiskが存在しているのかを検討する。

2.研究の視点および方法

英語では、日本語において『危険』を指す言葉が複数ある。一般的にRisk解析において使用される言葉は、Hazard・Peril・Riskの3つであり、今日用いられる用語や概念は、概ね固定されている。

   

日常生活に存在するRiskにはどのようなものがあるのか。
 日常生活の分類については、内閣府が実施している、「国民生活選好度調査」における10領域(①医療と保健・②教育と文化・③勤労生活・④休暇と余暇生活・⑤収入と消費生活・⑥生活環境・⑦安全と個人の保護・⑧家族・⑨地域生活・⑩公正と生活保障)を参考にした。
 Risk事象については、本来Riskとは、その発生に伴い利損益の両方が生じ、その中で得られる利益を最大に、且つ生じる損失を最小に抑えるという視点で対策が立てられるものである。しかし、日常生活の中で発生するRiskを考えた場合、その影響は被る損失の方が、大きいものが多い。本研究においては、発生時に損失のみを生みだすPure Risk(純粋Risk)のみに焦点化している。また、先行研究を元に、Risk事象を「環境的Risk」「社会的Risk」「人的Risk」に分類した。
 本研究では、日常生活区分およびRisk事象区分の2つの視点から、日常生活Riskを捉えている

3.倫理的配慮

本研究は文献研究であり、日本社会福祉学会研究倫理指針「引用」項目に準じて研究を進めた。

4.研 究 結 果

一般的にマスメディアなどの外部情報として情報量の多いRisk事象が結果的に、Risk認知度も高くなり、Riskへの対処能力も高くなる。一方で、出現頻度・遭遇頻度が低いRiskについては一度発生した場合、その被害も大きくなる。そのRisk被害の差を規定するのが、個人の所属するコミュニティが保持するRisk対処機能の程度であり、コミュニティにおけるコミュニティリスクの認知度の差である。
 また、特定のRiskに対処するため、新たなRisk発生が予見されるのも、現代の日常生活Riskには想定される。複数のRiskへの同時対処が求められている。
 あらゆるRisk事象が、個人のみで対応されているのではなく、コミュニティの問題としてコミュニティリスクとして対応されている (コミュニティ内のメンバーに著しい影響がある場合は、コミュニティ全体の問題と認識され、コミュニティリスクとして対応される。コミュニティの特定のメンバーのみに影響がある場合は、そのRisk事象の情報提供のみで終わる場合もあるだろうが)。適切なRisk認識を提供する場として、コミュニティという存在が重要である。
 コミュニティという立場からRisk解析を行い、個人へのRisk対処強化を図るのか、あるいは自治体・行政へのRisk対処強化を求めるのかの判断を行うことが、コミュニティにおけるRisk解析では重要になる。

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