自由研究発表地域福祉3  筒井 孝子

全国の地域包括支援センターの専門職における連携活動の実態

○ 国立保健医療科学院  筒井 孝子(会員番号1486)
立教大学大学院  大夛賀 政昭(会員番号6668)
静岡県立大学  東野 定律(会員番号4467)
立教大学  高橋 紘士(会員番号0434)
キーワード: 《地域包括支援センター》 《介護予防事業》 《連携尺度》

1.研 究 目 的

地域包括支援センターには、社会福祉士、保健師および主任介護支援専門員など保健福祉の専門職が配置されているが、今後の地域ケアシステムの円滑な運営のためには、これら専門職間の連携が必須となる。しかし、これまで地域包括支援センターに勤務する専門職における連携活動の実態を把握した検討は、ほとんどない状況である。
  そこで、本研究においては、専門職の協働や連携の実態を明らかにし、その促進を図る際の課題を明らかにすることを目的とし、全国の地域包括支援センターへの悉皆調査を実施し、ここに勤務する専門職における連携実態を調査した。

2.研究の視点および方法

全国の市区町村(2009年3月現在:1,804自治体)を対象に、当該自治体の地域包括支援センター(3,973か所)に所属する全専門職を対象とした連携活動に関する調査を行った。調査は、オンラインアンケート調査法と郵送法を採用した。
  調査項目は、所属している地域包括支援センターの概要、対象者の性別、年齢、役職・専門職種、勤務年数といった職員の基本属性および職員の連携活動の実施状況についてのデータを収集した。連携活動の把握については、筒井(2003)が保健医療福祉職における連携を総合的に把握するために開発した「連携活動評価尺度」の15項目を用いて評価を行った。連携活動得点の算出に際しては、欠損のない5424人の回答を用い、各項目を0~3点の4段階で評価し、計45点満点とした。

3.倫理的配慮

本研究は、国立保健医療科学院に設置される倫理審査委員会の認証を得た(NIPH-TRN#09001)。

4.研 究 結 果

1)調査の回収率
1,495の地域包括支援センターに所属していた5,870名の専門職等の回答が収集された(回収率37.6%)。県別の内訳は、北海道118か所(47.8%)442人が一番多く、続いて神奈川100(36.0%)358人、東京80か所(23.5%)306人、埼玉77か所(35.8%)239人、愛知67か所(38.5%)232人であった。
2)対象者の基本属性
  性別は、男性が1040人(17.7%)、女性が4,698(82.3%)で女性が8割以上であった。平均年齢は42.3歳、年齢階層は40歳代が最も多く1,826人(31.1%)であり、次いで、30歳代1,681人(28.6%)、50歳代以上1,572人(26.8%)、30歳未満724人(12.3%)と続いていた。保有資格は、社会福祉士が1,646人(28.0%)で最も多く、次いで、主任介護支援専門員が1,600人(27.3%)、保健師が1,506人(25.7%)であった(複数回答)。
  勤務形態は、専従(常勤)が3,139人(81.1%)、続いて専従(非常勤)が605人(10.3%)であった。
3)職種別平均年齢、平均経験年数、連携活動の平均値
  職種別の平均年齢は、主任介護支援専門員46.8歳、保健師40.4歳、社会福祉士40.0歳であった。また、職種別の平均経験年数は、保健師15.5年、主任介護支援専門員6.4年、社会福祉士4.2年で、保健師が長かった。
4)連携活動得点の概要
  連携活動得点の平均値は、23.6点(SD±5.2)であった。年齢区分別の平均得点の値は、50歳代以上の24.5点が最も高く、次いで40歳代の23.7点、30歳代の23.1点で年齢が上がるにしたがい、得点も高くなっていた。一元配置分散分析の結果、いずれの年齢区分の群間においても統計的に有意な差が示された。そのうち、保健師、看護師、主任介護支援専門員、社会福祉士のいずれかに該当する者の平均連携尺度得点は24.0点(SD±5.0)であり、その他の職種の平均連携尺度得点21.1点(SD±5.8)よりも、ばらつきが少なく、やや得点が高い傾向がみられた。また、T検定を行ったところ、統計的有意差が示された。

5)結果のまとめおよび考察
  全国の保健師を対象にした先行研究によると(筒井・東野2005)、平均得点は22.5点(SD±5.1)、地域権利擁護事業(当時)の専門員を対象とした先行研究(筒井・東野ら2004)では23.4点(SD±5.1)であり、今回の調査対象の平均値はわずかに高い傾向が示されていた。今後は、連携活動得点を規定する要因についての詳細な分析が必要と考えられた。
  ※本研究は、平成20年老人保健健康増進等事業(未来志向研究プロジェクト)「地域包括支援センターの評価に関する研究(主任研究者:高橋紘士)」の研究成果の一部を取りまとめたものである。

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