自由研究発表地域福祉3  増田 和高

地域包括支援センター・在宅介護支援センターによる
  ネットワーキング活動の現状と課題
-地域包括支援センター・在宅介護支援センターへの調査をもとに-

○ 大阪市立大学大学院後期博士課程  増田 和高(会員番号6310)
大阪市立大学大学院後期博士課程  朝野 英子(会員番号6314)
大阪市立大学大学院後期博士課程  畑 亮輔(会員番号6695)
大阪市立大学大学院  岡田 進一(会員番号1746)
大阪市立大学大学院  白澤 政和(会員番号0769)
キーワード: 《地域包括支援センター》 《在宅介護支援センター》 《ネットワーキング》

1.研 究 目 的

少子高齢化が進む中で高齢者が地域で生活を継続していくためには、介護サービスなどのフォーマルサポートに加え地域住民などのインフォーマルサポートを含んだ包括的な支援を展開していく必要がある。そのためには、専門職や地域住民、地域の社会資源と連携を図りながら、地域全体で福祉的課題に取り組むための支援体制を整えること、つまりネットワーキングを行っていくことが必要不可欠となってくる。こうしたネットワーキングの中核的な機能を果たすことが期待されている公的機関の一つとして在宅介護支援センターがあげられる。在宅介護支援センターは事業創設当初より、民生委員や地域のキーパーソンなどを相談協力員として委嘱し、ネットワークを構築していくことが求められてきた。また、介護保険制度の改正に伴い、2006年度以降は在宅介護支援センターに求められてきたネットワーキング機能を含む多くの機能が地域包括支援センターに移ることになった。
  しかし、在宅介護支援センター及び地域包括支援センターに期待されているネットワーキング機能について、理念的な言及はなされてきたものの、具体的な実践方法を示した研究は散見する程度であり、現場の職員もネットワーキングに対して共通した認識を有していない現状にある。そこで、本調査では現場職員が実際にどのようなネットワークを構築し、運営しているのか、その実態を把握することにより、今後のネットワーキング体制の確立に向けた示唆を得ることを目的とした。

2.研究の視点および方法

地域包括支援センター及び、在宅介護支援センターが実践しているネットワーキングの現状を把握するために、「全国地域包括・在宅介護支援センター協議会」の会員として、平成21年1月時点で登録されている3,871センターを対象に自記式質問用紙を用いた郵送調査を行った(地域包括支援センター:1,821センター、在宅介護支援センター:1,996センター)。調査期間は平成21年1月26日~2月9日までであった。有効回答数は1,570センターであり、回収率は40.6%であった。質問内容については、「センターの種類」や「運営主体」などの各センターの基本属性に加え、地域包括支援センター・在宅介護支援センターが主体的に運営しているネットワークの現状について、「取り組んでいるネットワークの数」、「取り組んでいるネットワークの目的」、「ネットワークを構成するメンバー」、「会合一回あたりの出席者数」、「会合の開催頻度」などについて尋ねた。なお、在宅介護支援センターと地域包括支援センターでは、制度的位置づけや期待されるその他の業務において差異が見られるが、本調査では、両機関は共通してネットワーキング機能が期待されていると考えられることから、両機関を対象とした調査、分析を行った。

3.倫理的配慮

調査・分析にあたり回収された調査票は全てデータ化し、回答者の匿名性が確保されるよう倫理的配慮を行った。

4.研 究 結 果

「取り組んでいるネットワークの数」は地域包括支援センターが平均3.3件のネットワークを運営しており、介護支援センターは平均2.0件のネットワークを運営していた。また、両支援センター合わせて4,279件のネットワークが運営されていた。回答のあった4,279件のネットワークについて、それぞれの特徴を調べたところ、「ネットワークの種類」は、構成するメンバーによって「専門職のみで構成されるネットワーク」(ネットワーク全体の40.9%)と「専門職と地域住民の混成で構成されるネットワーク」(ネットワーク全体の59.1%)との二つに分類することができた。また、「取り組んでいるネットワークの目的(複数回答)」については、ネットワーク全体の77.8%(3,329件)が「情報交換・共有」をあげており、次いで多かったものが「学習会などによる構成員の結束強化」の56.3%(2,408件)であった。一方で、「社会資源開発」をネットワークの目的として挙げているものは、ネットワーク全体の39.9%(1707件)にとどまっていた。
  「取り組んでいるネットワークの目的」によって「ネットワークの種類」が異なるかどうかということを調べるために、クロス集計を用いて分析を行ったところ、「ケース検討」については「専門職のみで構成されるネットワーク」が、「支援の必要な対象者の発見や見守り」については「専門職と地域住民の混成で構成されるネットワーク」が積極的に取り組んでいる傾向にあることが明らかとなった。「ネットワークの種類」別に「会合一回あたりの出席者数」をクロス集計で見たところ、「専門職のみで構成されるネットワーク」は10人以下の規模の会合が多く、「専門職と地域住民の混成で構成されるネットワーク」は、11人以上の規模の会合が多い傾向にあることが確認された。
  以上の結果より、地域包括支援センター・在宅介護支援センターがネットワーク活動を通して、様々な課題に取り組んでいる実態が明らかと成った。しかし、地域福祉を考えるうえで重要な要因の一つである社会資源開発に対する取り組みが相対的に弱く、社会資源開発機能の強化を図っていく必要があると考える。また、取り組む目的によってネットワークを構成するメンバーが異なっていることが考えられ、今後はこうしたネットワークの種類別に、ネットワーク構築のプロセスや運営方法などを検討し、具体的なネットワーキングの方法論を明確にすることで、地域福祉の更なる向上を目指していく必要があると考える。(なお、本研究は「平成20年度老人保健健康増進等事業」による国庫補助を受け実施された「地域包括支援センターの業務の検証及び改善手法に関する調査研究事業(代表:林)」のデータに基づくものである。)

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