自由研究発表地域福祉1  石井 祐理子

民生委員・児童委員のボランティア活動支援に関する一考察
-アンケート調査結果から-

京都光華女子大学  石井 祐理子(会員番号4192)
キーワード: 《民生委員・児童委員》 《ボランティア活動》 《地域福祉活動》

1.研 究 目 的

近年の社会福祉現場においては、地域福祉活動の推進に注目が集まっており、その中心 的な担い手として民生委員・児童委員に大きな期待がかかっている。しかしながら民生委 員・児童委員と共に、その地域福祉活動を実践する従来の地域活動を支えていた地域組織・ 団体や地域役員においては、高齢化や担い手不足また地域自体の脆弱化などから人数の減 少が懸念されている。
  そうした中で、「地域住民がボランティア活動として地域福祉活動へ参加する」という ことを促す取り組みが必要とされ、民生委員・児童委員に対して、そうしたボランティアの発掘、養成、相談、調整などのボランティア活動支援機能が求められている。そのため、民生委員・児童委員にはボランティア活動に関する理解を深めることが、地域福祉活動の活性化に向けて期待されている。
  そこで、本調査では、民生委員・児童委員の活動の実態把握と、ボランティア活動の経験やボランティア活動に対するかかわりについての意識を明らかにすることを目的とする。そのうえで、これからの地域福祉活動を充実させるために、民生委員・児童委員がボランティア活動支援について必要と感じている情報や資源などの意見を整理する。そうして明らかになった現状をふまえ、今後民生委員・児童委員に期待されるボランティア活動支援のための機能の獲得に向け、どのような研修や情報提供が必要であるのかを検討する基礎的資料となることを目指す。

2.研究の視点および方法

民生委員・児童委員のボランティア活動経験は、民生委員・児童委員がボランティア活 動に対する様々な支援機能を実行するうえで、それらの骨格を成す大変貴重なものである。本研究では、本来の民生委員・児童委員活動の実態を把握したうえで、民生委員・児童委員のボランティア及びボランティア活動に関する意識を明らかにすることで、現実的に実効性の高いボランティア活動支援機能を示唆することを目指した。
  研究方法は、S市の民生委員・児童委員に対する全数調査を実施し、単純集計による実態把握と分析を行った。調査実施にあたっては、S市民生委員・児童委員担当部に調査票の配布と回収のご協力をいただいた。調査実施期間は2008年6月より約1ヶ月間とした。質問票は、単一回答法、複数回答法、自由回答法を併用した。
  調査票配布数487通のうち、回収数は450通(回収率92.4%)であった。

3.倫理的配慮

本研究はアンケート調査を中心に取り組んでおり、調査実施にあたっては本学会の研究倫理指針に従った。また調査対象者・団体に対しては、データの匿名性や調査結果の公開など事前説明を行い、同意を得たうえでアンケート調査への協力を得た。

4.研 究 結 果

(1)S市の民生委員・児童委員の実態
  S市の民生委員・児童委員は、ほぼ半数の人が高齢者に対する支援を、約4分の1の人が児童に対して積極的に支援したいと考えている。  実際には高齢者支援に対して時間を費やせているとはいえ、研修への参加に時間を費やすことが多くなっている。民生委員・児童委員が取り組む問題が複雑化し多様化しているため、研修の機会が必要に応じて増加し、そのために代わって対象者と向き合う機会が減少していることがうかがえる。しかしながら現実の問題を解決していくためには研修への参加と具体的な支援活動の効果的な相互関係を構築してくことが必要であろう。
(2)ボランティア活動に関する意識
  S市の民生委員・児童委員の8割以上は、民生委員・児童委員活動をボランティア活動ととらえている。その理由としては、「地域福祉活動にかかわっているから」が最も多い。続いて「自発的にかかわっているから」、「無償で活動しているから」という理由をあげている。すなわち、民生委員・児童委員活動の基本的性格である「自主性、奉仕性、地域性」をボランティア活動の特性として捉えており、それゆえに「民生委員・児童委員活動はボランティア活動である」と理解していると考えられる。
  ところがその一方で、「民生委員・児童委員活動はボランティア活動とは思わない」と回答した理由には、「行政からの指示によって活動しているから」、「社会奉仕活動とは違うから」という理由をあげている。民生委員・児童委員は活動現場で行政機関の協力機関として機能することが求められており、自由な発想に伴う自発的な活動を行うボランティアとは違うという認識を持っていると考えられる。
(3)ボランティア活動の推進に向けて
  民生委員・児童委員は自らが相談できる、ボランティア活動に関する専門の相談窓口を把握しておくことが必要になるが、約3割は同じ民生委員・児童委員に相談を持ちかけていることが明らかになった。しかし、地域には社会福祉協議会ボランティアセンターや、行政の相談窓口も設置されているのだから、民生委員・児童委員には今後一層これらの相談窓口を活用することを期待したい。同時にボランティア活動の相談窓口を担う専門職スタッフ側からも、積極的に民生委員・児童委員に対する情報提供や必要に応じた支援を展開することが求められる。

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