ポスターセッション高齢者保健福祉  勅使河原 隆行

社会福祉士に必要とされている価値観に関する研究

○ 千葉商科大学  勅使河原 隆行 (会員番号5794)
キーワード: 《社会福祉士》 《価値観》 《専門性》

1.研 究 目 的

 近年では、人間の尊厳の保持、当事者の自己決定の尊重、自立支援等の理念に基づいて社会福祉サービスの提供が行われている。社会福祉士には、人間の尊厳を保持し、当事者の立場に立って適切な社会福祉サービスの利用を支えながら、その権利擁護を行うことが求められている。また、社会福祉士には、援助に関する知識や技術に加え、価値観も重要な要素として挙げられる。そこで本研究では、この価値観に焦点を置いて、「社会福祉士に必要とされている価値観には、何が求められているのかを解明する」ことに目的を置く。これにより、現場で働いている社会福祉士の専門性を高めることにも役に立つと思われる。また、専門性を高めることは、社会福祉士の本来的使命である、当事者の立場に立った権利擁護の実践を、より質の高いものにすることが出来ると思われる。 

2.研究の視点および方法

 相談援助を実践している社会福祉士を調査対象者とし、郵送または持ち込みにより調査を行った。その調査を集計し、主成分分析を行って社会福祉士に必要とされている価値観に関する項目を確定した。調査票は無作為に選び出した50施設の施設長宛に、それぞれ5枚の調査票を配布し回答を求めた。なお各施設での調査対象者の選別は、各施設長に社会福祉士資格を有する者を選別してもらい実施した。調査期間は2010年3月1日から2010年3月31日の1ヶ月間に実施した。郵送または持ち込みによる調査票の配布枚数は300枚、返送調査票数172枚、有効票数170枚であった。回収率57.3%、有効率56.6%であった。調査の集計には、統計ソフトSPSS(10.0J)を使用した。
 調査項目は、先行研究や国家試験問題を参考にして調査票を作成した。具体的には、①これまでの社会福祉士国家試験に出題された問題の中から、出題頻度の高い価値観に関する項目を選び出す。②出題頻度はそれほど高くはないが、社会福祉専門職養成施設等で学習するカリキュラムの内容に含まれている価値観に関する項目を選び出す。③先行研究や、現在の社会福祉を取り巻く環境を踏まえ、国家試験や社会福祉専門職養成施設等で学習するカリキュラムの内容に含まれていない価値観に関する項目を選び出す。という方法により最終的な項目を選び出した。項目数は、53項目であった。なお、本調査の尺度は「非常に低い」から「非常に高い」までの5段階リッカートスケールにより調査を行った。

3.倫理的配慮

 本調査における倫理的配慮として、調査対象者に対して、回答した内容はすべて数値化を行い、個人が特定されない旨を調査票に明記した。その上で、回答が得られたことによって、同意したと理解する旨を明記した。 

4.研 究 結 果

 質問項目の集計に際しては、「非常に低い」を1点、「低い」を2点、「普通」を3点、「高い」を4点、「非常に高い」を5点と点数化し集計を行うことにした。これらの調査項目の平均値が高いほど、相談援助を行う社会福祉士に必要とされている価値観に関する項目であるということになる。
 援助の価値観に関する質問項目全体の平均値は3.737であった。最上位の質問項目の平均値は4.494であり、最下位の質問項目の平均値は2.390あった。また、全体の平均値が3.0以上であることから、ほぼすべての項目が「社会福祉士が援助を実践する現場で、必要性が高いと認識している項目」であると言える。この結果に基づき、質問項目の53項目について主成分分析(バリマックス回転)を行うこととした。主成分分析をするにあたり、本研究で使用した援助の価値観に関する質問項目が妥当であるのかを検証するため、KMOおよびBartlettの検定を行った。その結果、Kaiser-Meyer-Olkinの妥当性は .929と高い値であり、また、Bartlettの有意確率が .000であるため、主成分分析を行うことに意味があるという結果が得られた。なお、信頼性係数はCronbach'sのα係数 .974と高い値であり、質問項目は内的一貫性が高いものであると判断できる。主成分分析の結果、53項目すべてが負荷値が0.35以上であったため、選び出した53項目が、妥当であることが検証できた。
 因子数は、固有値が大きく落ち込む6因子を中心として、すでに選び出した53項目をグルーピングした。グルーピングすることによって、援助の価値観に関する53項目をより細分化でき、明確化することができる。しかし、主成分分析を行ったため、第1因子に該当する項目があまりにも多く現れた。そのため、より細分化を行い、最終的には9下位項目として確定した。確定した項目は、①当事者主権に関する価値観、②個人情報の保護に関する価値観、③価値観の理念、④人間の尊厳と保持に関する価値観、⑤自己決定の尊重に関する価値観、⑥虐待防止に関する価値観、⑦法令順守に関する価値観、⑧障害に関する価値観、⑨当事者利益の保護に関する価値観、の9項目である。
 社会福祉士には、社会福祉を取り巻く環境の変化や法制度の変化に対応し、時代に即した新しい専門性が求められているものと思われる。したがって、相談援助を行う社会福祉士には、現時点で本研究において抽出した項目が、援助の価値観として要求されており、これらの項目の内容を実践現場において生かさなければならないということである。

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