ポスターセッション高齢者保健福祉  村山 くみ

中高年者の主観的健康感と関連要因
 -地方都市シニア大学受講者を対象として-

○ 東北福祉大学 村山 くみ(会員番号5666)
キーワード: 《中高年者》 《主観的健康感》 《社会参加活動》

1.研 究 目 的

 超高齢社会を迎え、日本では高齢者対策が主要課題となっている。2000年の介護保険の導入と同時に、21世紀の高齢社会を見据えた施策としてゴールドプラン21が開始された。その基本的な目標の一つに、「活力ある高齢者像」の構築が掲げられ、高齢者が可能な限り健康で生きがいをもち、社会へ参加できるよう社会全体で支援していくことの必要性が示された。そこで、本研究では、社会への高い参加意識を持つと考えられるシニア大学受講者を対象とした調査研究の成果をもとに、中高年者の生活状況と個人の健康感との関連要因について検討することとした。 

2.研究の視点および方法

1)本研究の視点
 本研究の視点は、「活力ある高齢者像」の構築を目指し、介護予防施策を通じて健康寿命の延長を図るところにある。芳賀1)は高齢期の健康に必要な条件として、自立生活を保障する生活能力や健康感・幸福感などの精神的自立であると述べ、身体面だけでなく社会的・心理的な視点を含んだ包括的な視点から捉えることの重要性を指摘している。健康度を自らが評価する主観的健康感は、客観的指標では表せないより全体的な健康状態を捉えることができる健康指標とされており、その関連要因を検討することは、効果的な健康増進活動や健康教育のあり方を模索する上で援用し得る知見となる。
2)研究方法
①調査対象
 A市保健福祉事務所が主催するシニア大学の受講者350名を対象に自記式質問紙票を用いた集合調査を実施した。調査期間はシニア大学の講義に合わせ、平成21年7月13日~7月25日とした。
②調査項目
 本研究では、調査項目として、基本属性、主観的健康感を含む健康に関する項目、医療受診及び健康診断受診状況に関する項目、生活満足度尺度(以下、LSI-K)、社会関連性指標(以下、ISI)、高齢者用ソーシャル・サポート尺度を用いた。
 基本属性については、年齢、性別、世帯構成、職業、収入の内容、死別体験について調査した。主観的健康感は、「あなたは普段ご自分で健康だと思いますか」という質問に対し、「とても健康である」、「まあまあ健康である」、「あまり健康ではない」、「健康ではない」の4段評定から回答を求め、「とても健康」「まあまあ健康」と回答した者を「健康群」、「あまり健康ではない」「健康ではない」と回答した者を「非健康群」に再分類した。
③解析方法
 第一に、単変量解析では主観的健康感の2群と各項目において分類した2群とのクロス表を作成し、Fisherの直接確率法を用いて各項目間の関連の有意性を検討した。
 第二に、交絡要因を検討するために多変量解析をおこなった。多変量解析では、目的変量を主観的健康感、説明変量を単変量解析で有意性が認められた各尺度の変量を用いて多変量ロジスティックモデルを構築し、ステップワイズ法(変数増加法)により独立性の高い変量を検出した。
 なお、単変量解析及び多変量解析の有意水準をp<.05に設定した。

3.倫理的配慮

 対象者には、調査の趣旨と内容の説明、プライバシー保護について、文書と口頭で説明を行った。調査票は、調査に同意した対象者だけに提出を求め、調査票の提出をもって調査への同意を得るとみなすことを伝えた。調査票は無記名とし、個人データは統計的に処理・分析し、個人が特定されないよう十分配慮した。 

4.研 究 結 果

 調査対象350名のうち283名(81.0%)から回答を得た。分析は、主観的健康感への回答に不備のなかった278名(79.4%)を対象とした。
 単変量解析の結果、医療受診及び健康診断受診状況に関する項目において2項目、健康に関する項目で1項目、LSI-Kにおいて5項目、ISIにおいて5項目、ソーシャル・サポートの受領に関する項目で6項目、提供に関する項目で5項目の合計24項目において有意差が確認された。多変量解析の結果、主観的健康感との関連に有意性が認められた項目は、医療受診及び健康診断受診状況に関する項目の「通院の有無」、LSI-Kの「去年と同じように元気」、ISIの「積極性」、ソーシャル・サポートの受領に関する項目の「元気づけてくれる人の有無」、の合計4項目であった。
 以上の結果から、通院や入院といった既往症やストレスなどの生活習慣とともに、活動的に生活できていると自ら感じられることが主観的健康感に関連していることが明らかとなった。また、ソーシャル・サポートとの関連も認められており、今後は新たな仲間つくりの場の提供など地域での交友関係の構築を視野に入れた健康増進活動等の実施が求められる。

1)芳賀博ほか(1996)「高齢者の心身の健康に及ぼすライフスタイルの影響」,笹川医学医療研究財団 高齢者の医学医療に関する研究,12(1), 117-121. 

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