ポスターセッション地域福祉  河本 秀樹

男性家族介護者のソーシャル・キャピタルに対するアクセスの研究

○ 城西国際大  河本 秀樹(会員番号6497)
キーワード: 《男性家族介護》 《ソーシャル・キャピタル》 《ジェンダー》

1.研 究 目 的

 介護保険制度では、「介護の社会化」を理念として掲げている。しかし、入所施設の不足、保険料の問題、利用制限の問題、介護の担い手の問題、制度の持続性の問題など介護保険制度自体の存続を危ぶむ声までがではじめている。そしてそれらの問題が解決されないままの現状では社会によって介護を支えるという理念は、とても実現しているとは言えない状況であると思われる。
 そのような中で、社会の変化や家族構成の変化により、主たる介護者が男性である場合が珍しくなくなっている。主たる介護者が男性である割合は28.1%となり、全国で16862人(平成19年国民生活基礎調査より)とされる。従来、日本では介護は「女性が担うもの」とされてきた。そのような中で家族介護者が家庭内や地域で孤立、そして疎外されていると感じたりなどの問題点は、様々な支援が様々な形で行われているにもかかわらず、以前と同様であり、大きく変わっていないと筆者は考えている。未だに解決していない大きな問題である。
 さらに男性介護者が増えている現状では、新たに問題も起きている。それは男性介護者がソーシャル・キャピタルにアクセスする際に、従来の女性が主たる介護者であったままの視点とは異なるソーシャル・キャピタルに対するアクセスの問題である。今後さらに増加すると思われるソーシャル・キャピタルへのアクセスを研究することは、これからの社会において意味があると思われる。  

2.研究の視点および方法

 家族介護者へのインタビュー調査は今までにいくつか行われている。長時間にわたり家族介護者のインタビューを続け、その家族介護者の変化の様子を記録したものなど貴重な報告などがされている。つまり、家族介護者の声を拾おうという努力はされている。
 そして、充分とは言えないまでも、フォーマル、インフォーマルを問わず、様々な形で家族介護者に対するソーシャル・キャピタルが提供されていることも事実である。いくつかの例を挙げると、家族、親戚、友人、近隣住民、在宅介護者の家族会、社会福祉法人、民間団体などのインフォーマルな人たち、民生委員、保健師、役所の高齢担当の職員、地域包括支援センター、社会福祉協議会などのフォーマルな人たちなどの支援はある程度は存在していたのである。その様々な支援がどこまで家族介護者を支えられるのかは、一概には言えない。しかしそれらの支援は有用であることをしばしば見聞きする。筆者がかかわらせていただいている家族会の会合などでの出席者(介護者)の発言や様子からもそれらはうかがい知ることができる。
 少ないながらも文献は存在しており、その文献を研究することでソーシャル・キャピタルと男性介護者のアクセスについて考察する。従来のソーシャル・キャピタルは女性が家で介護することを前提としていたために、増加する男性家庭介護者への配慮がされているのかという点を考えていきたい。           

3.倫理的配慮

 プライバシー保護の観点から個人が特定されないために、筆者が関わった家族会での発言や論文の中では個人名をイニシャル等に変えることで、個人名を特定できないよう匿名にする。また、今回は文献研究ではあるが、家族会との関連、地域住民との関連もあるために、趣旨を損なわない範囲で団体の名称、人物名、地名などを修正変更する。 

4.研 究の結 果

 今回のポスター発表は、今まで比較的焦点があたってこなかった男性家族介護者をとりあげ、さらに男性家族介護者の地域に存在するソーシャル・キャピタルへのアクセスを考える。それは家族介護者の場合、多くは在宅で介護をしているため、現在住んでいる地域との関係を考えないわけにはいかない。
 また、上記のように従来のソーシャル・キャピタルは主に女性の家族介護者向けに作られているとの印象を文献から受けている。そのソーシャル・キャピタルには増加する男性家族介護者のアクセスに対する配慮についてなされていないところに気がついた。
 現在、様々な文献等で研究されている内容は、男性介護者の精神的、身体的負担、経済的負担についての研究が中心であり、特に高齢な男性に苦手な人が多い家事能力等などにも焦点が当たっているが、それを解決するには至っていないようである。
 女性の各種負担を減らすために存在するソーシャル・キャピタルが、男性家族介護者のソーシャル・キャピタルのアクセスに関して配慮されていなかった。今までには大きな問題にはなっていなかったが、男性家族介護者の増加とともにソーシャル・キャピタルの必要性とアクセスとの必要な関係がみえてくるのではないだろうか。そして、そのことが男性介護者にとってはどのような意味を持つのかを今後の課題としたい。
 本研究は、文献研究とし、男性家族介護者に関するいくつかの論文、ジェンダーと社会福祉から見た視点の論文、家族介護の変遷、家族会等の実践の記録、国民生活基礎調査等の様々な報告書など様々な文献より、筆者がまず第一番目の目標としている文献による男性家族介護における問題点の洗い出しを行ない、その問題点をソーシャル・キャピタルのアクセスにつなげたい。  

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