姫路市における地域包括支援センターに対する第三者評価事業の試み
-地域連携およびネットワークづくりの実践から-
○ 近畿大学豊岡短期大学 武田 英樹 (会員番号5661)
姫路市介護サービス第三者評価機構 藤田 益伸 (会員番号7316)
キーワード: 《第三者評価》 《地域包括支援センター》 《地域包括ケア》
地域包括支援センター(以下、地域包括)は、地域包括ケアを支える中核機関に位置づけられている。よって、地域包括には住民の複雑多様化したニーズに対応できるワンストップサービスの拠点としての役割が求められる。2009年の地域包括ケア研究会報告書でも触れられているとおり、サービスに関する実績評価が求められる時期にきている。しかし、地域包括の業務は多岐にわたることや地域性によって活動内容が変化することから、相談件数といった定数評価のみをもって判断し難い点が多い。よって、定数評価に加え、定性評価を用いることで地域包括の実態がより鮮明になるものと考えられる。
2009年度、姫路市では地域包括の運営が市直営方式から民間委託方式へ移行する事に伴い、当地域包括に対して第三者評価の受審を義務化した。その目的は地域包括の業務内容を振り返り、今後の活動展開に向けた気づきを促すというものである。
本研究は、姫路市での第三者評価の受審結果のうち、地域連携およびネットワークづくりに焦点を当ててその実態の明確化を図った。地域連携およびネットワークづくりへの取り組みとその評価を通じて、第三者評価を実施することの意義と効果について考察した。
2009年姫路市の13地域包括(委託型)を対象に実施された第三者評価受審結果における地域連携およびネットワークづくりに関する4項目(自由記述)を分析した。分析に当たっては、複数の研究者でピアレビューを行い内容の妥当性確保に努めた。
3.倫理的配慮姫路市介護保険課、地域包括支援センター管理者ほか関係者に対し、本研究の趣旨と評価結果については公表されているデータのみを使用する旨を説明し、同意を得た。
4.研 究 結 果13地域包括に対する第三者評価の受審結果から、地域連携およびネットワークづくりに関する取り組みについて各地域包括の独自性が明らかとなった。取り組まれている数が多い内容と特徴的な取り組みを表1に示した。各地域包括は独自のパンフレットを作成して、民生委員・自治会へ配布し、同時に地域の医療・福祉機関をリスト化していた。一方、主に関係団体へのヒアリングがされているが、個々の意見を集約・分析して地域ニーズを把握した地域包括は少なかった。また、地域包括は地域の社会資源を大まかに把握しているものの、地域住民の福祉活動の支援は情報提供が主であり、不足する社会資源の改善開発の実績がある所は少数だった。以上から、姫路市では、地域包括の存在と業務内容を周知することを第一と捉えた活動を展開しており、関係団体とのネットワークの強化や地域ニーズの調査・分析や社会資源の開発はこれから取り組むべき課題であることが判明した。
その一方で、パンフレットを住民全戸に配布したり、関係機関と協働して地域資源マップを作成する地域包括がみられた。また、姫路市では関係機関リスト等は公平性の観点から原則非公開となっているが、地域包括によって様々な公開方法の工夫がみられた。その他、活動の中で得られた意見をもとに介護者の会を結成したり、高齢者作品展を開催したりする等、各々の地域に応じた支援が展開されていることが明らかになった。
第三者評価を通して姫路市の地域連携およびネットワークづくりの現状が明らかになるとともに、地域に応じた様々な取り組み事例を拾い上げることができた。確かに自己評価のみでも、評価水準をもとに達成度合いを測定することは可能である。しかし、地域包括の活動は地域性に大きく左右され、当事者のみでは評価の客観性を確保することが困難である。そこで、第三者の視点を取り入れることにより、地域に応じた個性的な取り組みを発見し、地域包括職員に気づきを促し、今後の活動展開の指針を示すことができた。
また、評価結果が公表されることで市民に対して地域包括の特徴やサービス情報を伝える機会になることや、地域包括同士が他所の取り組みを相互参照することで、姫路市の地域包括における質的向上に関するボトムアップに寄与する効果が想定された。
※1.「公平性」の観点から関係機関リスト(マップ)は、姫路市の取り決めで非公開とされている。