ポスターセッション地域福祉  水主 千鶴子

「地域福祉計画」のカテゴリ別特徴
 -各市町村の福祉サービス事業に焦点をあてて-

○ 和歌山県立医科大学保健看護学部 水主 千鶴子(会員番号5156)
キーワード: 《地域福祉計画》 《市町村》 《福祉サービス事業》

1.研 究 目 的  

「地域福祉計画」は、社会福祉法の107条に位置づけられ、その規定は平成15年4月1日から施行されている。「地域福祉計画」は、高齢者福祉計画、介護保険事業計画、障害者などのこれまでの縦割りの福祉計画ではなく、総合的な福祉計画である。平成20年度末時点で「地域福祉計画」の策定状況は、全国で策定済み市町村は783で全体の43.5%にとどまり、法定化から5年経過したが、まだ半数に満たない状況である。
  A県での策定済み市町村は30市町村中12市町村で(策定率40%)で、全国平均より若干低い。策定が遅れている原因として、市町村の合併が控えていること、住民参加が求められているため大きな労力を必要としていること、財政難によるもの、そして地域福祉事態の定義が曖昧であり住民に浸透していないことなどが挙げられている。
  策定済み市町村が増えるなか、それらの中身を検討する必要がある。また、今後策定を促進していくためにも地域の実情を加味した指針となるものが必要となってくる。しかし、現在全国でみても「地域福祉計画」に関する研究は少ない。
  そこで本研究では、A県下において「地域福祉計画」が策定している12市町村の「地域福祉計画」を、その冊子から、計画される施策をカテゴリ別に分類することによって、その傾向を把握する。

2.研究の視点および方法

A県下12市町村の「地域福祉計画」の福祉サービス事業の特徴と傾向を把握する。調査対象は、平成21年8月の時点のA県下「地域福祉計画」策定済み12市町村の地域福祉計画冊子である。別冊がある場合はそれも含む。各市町村の「地域福祉計画」で示された内容や施策の項目をアイテムと呼ぶ。それらのアイテムを分野別にカテゴリ分けを行い次の9つのカテゴリすなわち福祉サービス事業、コミュニティ形成・近所づきあい・地域活動、ニーズ・課題・まちづくり、バリアフリー・ユニバーサルデザイン・交通、防災・防犯、情報・相談窓口、教育・人材、ボランティア・NPO、人権・虐待・DVに分類した。次にカテゴリ内で同じ内容のものはまとめて、下位の第2カテゴリとした。 

3.倫理的配慮

A県下策定済み12市町村に研究の趣旨を説明し、冊子を入手した。A県職員や社会福祉協議会職員、他府県の社会福祉協議会職員の意見も参考にした。 

4.研 究 結 果

福祉サービス事業は、全カテゴリの中で最も第2カテゴリ数が16と多かった。すなわち①環境保全、②サービスの充実、③連携、④子育て支援センター事業、⑤子育て支援・保育、⑥若者就労支援、⑦若者引きこもり支援、⑧障害者生活支援、⑨障害者就労支援、⑩高齢者生活支援、⑪高齢者就労支援、⑫介護保険、⑬介護予防、⑭地域密着型、⑮成年後見制度、⑯医療体制である。この第2カテゴリの特徴について述べる。
  環境保全に関する施策は、12市町村中5市町村で計画されていた。生活環境の改善と整備促進といった人間のための環境保全が中心である。自然を愛し環境を思いやる心の形成など環境教育にふれているが、自然環境の保全に関する施策はみられない。
  サービスの充実に関する施策は、全ての市町村で計画されていた。福祉サービスの質の確保のために、サービス事業者の情報公開や第三者評価の実施、相談窓口の開設などを実施する。サービスの基盤整備や必要とされるサービスの開発などが挙げられている。
  連携に関する施策は、全ての市町村で計画されていた。医療・保健・福祉の専門機関の連携、町内会・自治会、各種委員、NPOなどとの連携強化を図る。1市町村だけが、具体的に「ワン・ストップサービス」の実施を挙げている。
  子育て支援に関する施策は、全ての市町村で計画されていた。子育て家族の孤立化を防ぐために、子育てサークル・子育てサロン活動の推進、地域ぐるみの子どもの見守り活動を推進する。また、仕事と子育てが両立できるように保育サービスと学童保育の充実を図る。病児保育については全くふれられていない。
  若者就労支援に関する施策は、1市町村、若者引きこもり支援は、2市町村であり、若者支援に関する施策は非常に少ない。各市町村の地域福祉計画は、高齢者・子ども・障害者に対する施策が重要視されていることがわかる。
  障害者生活支援に関する施策は、11市町村で計画されていた。日常生活自立支援事業や成年後見制度や地域福祉権利擁護事業の充実を図る。障害者就労支援に関する施策は、10市町村で計画されていた。障害者の雇用確保や職場定着に向けた支援の実施を挙げている。 高齢者支援生活支援に関する施策は、全ての市町村で計画されているが、高齢者の就労支援に関する施策は7市町村であった。高齢者の就労支援は今後最も必要と考えられる。
  介護保険に関する施策は、11市町村で計画されているが、介護予防についての施策は8市町村であった。地域包括支援センターの充実を図り、介護予防事業の取り組みの推進が必要である。
  地域密着型に関する施策は、7市町村であった。グループホームや小規模多機能ケアなど地域密着型サービスの整備を図る。地域密着型サービスの情報提供が必要である。
  成年後見制度に関する施策は、9市町村であった。制度の周知を図り、利用を促進する。
  医療体制に関する施策は、11市町村であった。医療体制の整備とともに医療機関への交通手段の確保について具体策をあげている。

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