ポスターセッション地域福祉  岡村 綾子

住民組織の活動に対する住民の態度について

○ 金城大学社会福祉学部  岡村 綾子 (会員番号3446)
金城大学短期大学部 野田 哲郎 (会員番号2264)
キーワード: 《地域》 《住民》 《態度》

1.研 究 目 的

 A県B町は地域住民による支え合いを通じての"心ふれあう福祉のまちづくり"をめざしており、B町社会福祉協議会では、様々な事業・活動を展開している。その事業・活動は「生活相談」「住民福祉活動」「福祉団体支援」「ボランティア育成」「福祉サービスの提供」等と多岐にわたり、一定の成果をそれぞれの事業・活動ごとに挙げている。
 他方、地区では町内会や公民館等、住民組織ごとに活発な活動が展開されている。しかし、社会福祉協議会が展開している個々の事業・活動の成果と住民組織ごとに展開されている活動とを地区レベルで有機的に結合させ、互いの活動の効果を高めていくための、所謂'活動の組織化'が意図されていない。また社会福祉協議会としても活動の組織化のために住民組織に対して十分な支援が出来ているとは言い難い。
 そこで、現行の事業・活動の中から住民の支え合い活動に関連の深い事業・活動を取り上げ、地区における住民活動の現状を踏まえた上で、事業・活動間の連携を立案し、その効果を高めるとともに、その運営を通じて地区の自主的な福祉活動・事業推進の仕組み作りを模索することにした。
 今回は、模索の手始めとして、住民組織間・活動間の連携に向けての課題を検討するために行った住民組織の活動の実態についての聞き取り調査を行い、住民組織間の住民組織活動に対する態度について検討した。  

2.研究の視点および方法

 今回行った調査は、本来住民組織間・活動間の連携に向けての課題を検討するために実施した住民組織の活動の実態に関するものであったが、住民組織間では連携のための様々な会議や話し合いが設けられていると考え、それらの場合も含めて住民組織の活動について調査を行った。連携のための会議や話し合いの場面において、住民組織の活動に対する住民の態度が一番よく表れるのではないかと考え、連携を含め住民組織の活動の実態についての調査の回答から住民の態度を抽出し、そのような住民の態度が住民組織の活動にどのような影響を及ぼしているのか考察した。
調査対象:A県B町内のC・D2地区を取り上げ、地域の主たる住民活動の担い手組織である町内会、公民館、民生委員、壮年会、老人クラブの5つの組織の活動に携わっている住民(主として役員)延べ44人(C地区22人、D地区22人)を対象とした。
調査方法:上記対象者の好む日時に合わせて他記式質問紙法である個別面接調査を行った。
調査期間:平成21年9月初旬から中旬にかけて聞き取り調査を実施した。
調査内容: ①活動内容(主な活動・活動の目的・活動の対象等)、②活動の実施手順・方法(活動の企画・準備期間・参加の呼びかけ等)、③活動実績(参加実績・参加者の反応や感想等)、④活動の自己評価(活動の効果・活動の問題点や改善点)の4点を調査内容とした。           

3.倫理的配慮

 調査対象者には、研究の趣旨と内容、得られたデータは研究目的以外には使用しないことについてあらかじめ説明した上で調査への参加を要請し、調査への参加をもって研究協力受諾とした。また、調査結果においては検討・分析を行うにあたり個人が特定できないように配慮した。 

4.研 究 結 果

 調査協力者は、各種の組織の役員を兼務している人を含めてC地区22人、D地区22人であった。
 民生委員は、他の4つの組織団体の住民と異なり、行政から委嘱されたボランティアであるため、民生委員としての役割を果たすべく日々努力し、常にその任務について留意していると言える。また、任期は3年であり、再委嘱されている場合が多いためより一層任務を果たす努力をしているとみられる。町内会や公民館の役員の任期が1年の場合は、住民組織の活動内容がよく理解できないと、これまでに決められた通りに行っていることが多い。そのため、やらされている、やるしかないというような気持ちが根底にあるように思われる。これは、「地区行事はしぶしぶ参加するが、関わりたくない」という雰囲気が住民の中にあると指摘する人もいることから言える。この点に関して、「若い年齢層の住民組織が行事を同じ日に開催するので、行事への出席率が悪い」「新住民の人は自ら地域行事に参加することはない」という不満をもっている人たちがおり、一方で「伝統的に行ってきている」自負があり、「昔から行っているので行事の運営・管理の引き継ぎには困らない」という発言が象徴するように、以前から住んでいるある一定以上の年齢層住民とその子どもである若い年齢層及び新住民との間に住民組織の活動に対する態度に相違があると言える。また、年齢層による態度の違いは、入会資格を有する若年齢層の参加を求めている既設の壮年会や老人クラブに以前から住んでいる住民の子どもたちや新住民は参加資格の年齢に達しても参加する者が少ないというところにも表れている。           
 以上のことなどから次のようなことが言える。住民組織は住民組織の違いによって機能・役割が異なる。そのことが、それぞれの活動する際の態度に関係している。           

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