ポスターセッション地域福祉  岡田 直人

中山間地域市と大都市のなかの過疎地域における インフォーマル・セクターによる「ささえあい」の役割分担の条件について
 -歌志内市(北海道)ともみじ台地区(札幌市厚別区)における コミュニティワーク実習・生活福祉アンケート結果から -

○ 北星学園大学 岡田 直人 (会員番号2454)
北星学園大学 杉岡 直人 (会員番号0034)
北星学園大学 田辺 毅彦(会員番号2514)
北星学園大学 木下 武徳(会員番号3220)
キーワード: 《過疎地域》 《インフォーマル・セクター》 《ささえあい》

1.研 究 目 的

過疎地におけるインフォーマル・セクターによる「ささえあい」の役割分担について、人口減少と高齢化で先行する全国最少市の歌志内市(総人口4,553人、高齢化率40.7%)と札幌市のなかでも先行する厚別区もみじ台地区(17,891人、30.5%)を比較し、制度の狭間の住民生活ニーズに応える条件(内容と報酬)の共通項を探ることを目的とする。 

2.研究の視点および方法

調査を実施した2地域は、全国的にみても人口減少と高齢化の問題が先行する市・地区である一方、中山間地域と大都市の違いがある。そこで、この2地域でインフォーマル・セクターによる「ささえあい」の役割分担について、その条件の共通項を見いだすことは、将来の他都市の同様の問題への対応において参考になるものと考える。 調査は、質問紙を用いて北星学園大学「コミュニティワーク実習」の一環で学生・教員により行われた。歌志内市では2009年9月3日に7地区の町内会館で行われたグループインタビューの参加者による合計129件、もみじ台地区では2009年10月24日から11月9日までの訪問調査による132件と同年10月23日に地区のまちづくりフォーラムに参加した住民約70名のうち、協力の得られた11名の合計143件を分析対象とした。

3.倫理的配慮

2地域ともに予め調査趣旨を文書・口頭で説明し、同意の得られた者に対して行われた。また、調査結果は、報告書・学会発表・論文等で報告するが、調査対象者の個人名がでることがないことを説明した。回答したくない内容には答えなくていいこと等を説明した。 

4.研 究 結 果

歌志内市調査)欠損値を除き、性別は「男性」40名(31.7%)、「女性」86名(68.3%)であった。以下、最も多かったものでは、年齢層は「70~79歳」(45.0%)、年収は「151~200万円」(23.9%)、1ヶ月の生活費では「10~15万円未満」(29.4%)であった。 (もみじ台地区調査)欠損値を除き、性別は「男性」76名(53.1%)、「女性」67名(46.9%)であった。以下、最も多かったものでは、年齢層は「65~69歳」(36.2%)、年収は「251~300万円」(19.3%)、1ヶ月の生活費では「15~20万円未満」(27.0%)であった。
  2地域において、11項目に対して複数回答で「1時間当たりどのくらいの負担があると利用・協力しやすいか」を「無料」「500円」で尋ねた(表1)。結果、2地域ともに「話し相手」「ちょっとした外出先につきそい」「買い物」「買い物のつきそい」「病院のつきそい」の5項目は「無料」で、「庭の手入れ」「簡単な日曜大工仕事」「電気製品の付け替えや取り扱い」「ペットの世話・散歩」の4項目は「500円」での比率が高く共通した。一方、「窓ふきや掃除」「外出の際の介助」の2項目で回答が地域により分かれた。さらに、性別でみた場合(表2)、2地域ともに男女で項目による大きな違いはなかったが、もみじ台地区の「女性の500円」で「庭の手入れ」「窓ふきや掃除」「簡単な日曜大工仕事」「外出の際の介助」において「男性」より比率が高く、また「女性の無料」より比率が高かった。また、「電気製品の付け替えや取り扱い」では、もみじ台地区で性別により「無料」「500円」が分かれた。
  以上の結果、中山間地域市と大都市の区別なく過疎地域におけるインフォーマル・セクターによる「ささえあい」の役割分担の条件では、5項目ではコーディネートがあれば近所づきあいなどにより無料で行いやすいが、4項目ではワンコイン程度の有償によるサポートを行う組織の介在する余地があると考えられる。2地域で回答が分かれた2項目は、旧産炭地域の歌志内市では、地域の結びつきが強く、この程度は無料でいいと考えている一方、大都市のなかのもみじ台地区では、ワンコインが介することで利用・協力しやすい、また生活費の足しにしたいという前期高齢者の思いがあるのではないかと推測される。
  この研究の限界として、2地域ともに北海道に限られ、調査対象者が調査に協力的な住民の意見であったことと、データの統計的検定を行っていないことである。


本報告は、2009年度北星学園大学特定研究費の助成を受けて取り組まれた「高齢者の介護に関わる将来不安の調査」(研究代表者:田辺毅彦)による研究成果の一部である。

 

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