内閣府による「日本学術会議の在り方についての方針」に関する会長声明
2023年1月6日
日本社会福祉学会会長 空閑浩人
2022年12月6日に「日本学術会議の在り方についての方針」(以下「方針」)が内閣府より公表されました。また、同年12月21日開催の日本学術会議総会では、この方針に沿った「日本学術会議の在り方について(具体化検討案)」(以下「具体化検討案」)の説明が、内閣府よりなされました。さらに、これらの内容を盛り込んだ日本学術会議の改正法案を、この春にも国会に提出する予定であることが示されました。
これらの「方針」や「具体化検討案」のなかには、会員の選考に意見を述べる第三者委員会の設置に加え、会員以外からの会員候補者の推薦を可能にすることが記されています。会員の選考へ第三者が介入することは、会員選考が外部から管理されることになり、首相の任命権の強化や任命拒否の正当化につながることが危惧されます。また、政府から独立して職務を行う学術会議の独立性を危うくし、学術会議の存在意義にもかかわる事態をもたらすことにもなりかねません。
加えて、十分な議論がなされないままに、拙速に法改正を進めようとしている点にも強い危惧を抱かざるを得ません。
よって、このような事態を深刻に懸念するとともに、「方針」及び「具体化検討案」の再考を強く求めます。
「ロシアによるウクライナ侵攻」に関する会長声明
2022年3月12日
日本社会福祉学会会長 木原活信
ロシアによるウクライナへの侵攻は、世界の平和と安全を脅かし、国際秩序の根幹を揺るがす残虐な行為であり、到底受け入れられるものではありません。このような事態は、日本社会福祉学会が最も重視している人間の尊厳を剥奪するものであり、長期にわたってウクライナ市民、とりわけ日常生活を送る上で社会的支援を必要としている障がい者、高齢者、子どもたちなどの生活の土台を根幹から揺るがすものです。周辺諸国への難民問題も懸念されます。これらの問題が社会福祉実践の発展及びその国際的な学術的連携に及ぼす影響を憂慮し、速やかなる対話による平和的解決を強く望みます。
2020(令和2)年11月6日
2021(令和3)年6月7日更新
日本学術会議第25期推薦会員任命拒否に関する人文・社会科学系学協会共同声明
私たち人文・社会科学分野の337学協会は、日本学術会議が発出した2020(令和2)年10月2日付「第25期新規会員任命に関する要望書」に賛同し、下記の2点が速やかに実現されることを強く求めます。
- 日本学術会議が推薦した会員候補者が任命されない理由を説明すること。
- 日本学術会議が推薦した会員候補者のうち、任命されていない方を任命すること。
参加学協会(147学協会)
- 異文化間教育学会*
大阪歴史学会
科学技術社会論学会*
科学基礎論学会
科学社会学会*
カルチュラル・スタディーズ学会*
環境社会学会*
関西社会学会*
関東社会学会*
基礎経済科学研究所
北ヨーロッパ学会
九州考古学会*
教育史学会*
教育思想史学会
教育目標・評価学会*
経済理論学会*
言語系学会連合
言語文化教育研究学会
工業経営研究学会*
考古学研究会*
高大連携歴史教育研究会*
国際ジェンダー学会*
古事記学会
古代文学会*
産業・組織心理学会*
島根県考古学会
社会言語科学会*
社会事業史学会**
社会政策学会
社会政策関連学会協議会*
首都圏形成史研究会
上代文学会*
上智大学史学会*
昭和文学会*
女性史総合研究会
心理科学研究会*
説話文学会**
全国大学国語国文学会*
専修大学歴史学会
総合女性史学会
大学評価学会*
千葉歴史学会
地方史研究協議会
中央史学会
中古文学会*
中・四国前方後円墳研究会
中世哲学会*
中世文学会*
東京歴史科学研究会*
同時代史学会 - 東南アジア学会*
東北社会学会
東北哲学会*
名古屋歴史科学研究会
奈良歴史研究会
日仏社会学会
日本EU学会*
日本英語学会
日本映像学会*
日本応用心理学会
日本音韻論学会*
日本音楽教育学会**
日本科学史学会*
日本学校音楽教育実践学会
日本カリキュラム学会*
日本環境教育学会**
日本韓国語教育学会**
日本看護福祉学会*
日本旧石器学会
日本教育学会
日本教育工学会*
日本教育社会学会*
日本教育心理学会*
日本教育法学会
日本教育メディア学会
日本教師学学会
日本教師教育学会*
日本教授学習心理学会**
日本キリスト教社会福祉学会*
日本近代文学会*
日本グループ・ダイナミックス学会
日本言語学会
日本現象学会*
日本高等教育学会**
日本語学会*
日本語教育学会**
日本国際文化学会*
日本国際理解教育学会*
日本古文書学会*
日本サルトル学会*
日本史研究会
日本社会学史学会* 日本社会学会*
日本社会学理論学会*
日本社会教育学会**
日本社会福祉学会*
日本社会文学会*
日本宗教研究諸学会連合**
日本18世紀学会*
日本職業教育学会*
日本ショーペンハウアー協会* - 日本女性科学研究者の環境改善に関する懇談会(JAICOWS)*
日本秦漢史学会
日本心理学会
日本数学教育学会
日本スポーツ社会学会*
日本青年心理学会*
日本生理心理学会*
日本ソーシャルワーク学会**
日本村落研究学会*
日本地域福祉学会**
日本中東学会*
日本哲学系諸学会連合
日本都市社会学会*
日本ナイル・エチオピア学会
日本乳幼児教育学会
日本発達心理学会*
日本比較経営学会**
日本比較文学会*
日本美術教育学会
日本フェミニスト経済学会*
日本福祉教育・ボランティア学習学会**
日本文学協会*
日本文化人類学会*
日本マス・コミュニケーション学会*
日本野外教育学会
日本ラテンアメリカ学会*
日本リメディアル教育学会
日本臨床心理学会*
日本歴史学協会
バイロン協会
比較経済体制学会**
表象文化論学会*
仏教文学会*
文化財保存全国協議会
法と心理学会*
北海道教育学会**
萬葉学会*
民主主義科学者協会法律部会*
物語研究会*
唯物論研究協会*
幼児教育史学会*
ラテン・アメリカ政経学会*
歴史科学協議会
歴史学研究会
歴史教育者協議会
労務理論学会*
賛同学協会(190学協会)
- 秋田近代史研究会
秋田大学史学会
アジア経営学会*
アジア鋳造技術史学会日本支部*
石川考古学会
イタリア学会
岩手考古学会
岩手史学会
印度学宗教学会**
英語語法文法学会
オーストラリア学会*
鷹陵史学会*
大阪歴史科学協議会*
海洋考古学研究会
関東教育学会**
九州旧石器文化研究会
教育哲学会**
共生社会システム学会*
京都大学基督教学会
京都民科歴史部会
キリスト教史学会*
経営学史学会**
経営関連学会協議会*
経営史学会**
経済学史学会**
藝能史研究会*
ゲーテ自然科学の集い*
現代史研究会*
交通史学会
郡山地方史研究会*
国際芥川龍之介学会**
国際幼児教育学会
古代アメリカ学会*
古代学研究会*
子どもと自然学会*
駒沢宗教学研究会*
西行学会*
産業遺産学会*
史学研究会
実存思想協会*
社会経済史学会*
社会思想史学会* 宗教哲学会*
「宗教と社会」学会*
宗教倫理学会*
ジェンダー史学会*
ジェンダー法学会*
障害学会*
織豊期研究会
女性労働問題研究会*
新プラトン主義協会*
人文地理学会**
数理社会学会*
スピノザ協会*
駿台史学会*
政治経済学・経済史学会*
政治思想学会*
西洋史研究会
戦国史研究会
全国英語教育学会*
全国社会科教育学会
全国数学教育学会
体育史学会*
大学教育学会 - 大学史研究会*
地域社会学会*
地域女性史研究会*
中部教育学会**
中部哲学会*
朝鮮語教育学会**
朝鮮史研究会*
筑波哲学・思想学会*
哲学会*
ドイツ現代史研究会*
東欧史研究会**
東海社会学会*
東京学芸大学史学会
東南アジア考古学会*
東北史学会
東洋史研究会
内陸アジア史学会
西田哲学会*
西日本社会学会*
日英教育学会
日仏教育学会*
日仏哲学会*
日仏歴史学会
日本アメリカ文学会**
日本アフリカ学会*
日本イギリス哲学会*
日本移民学会*
日本印度学仏教学会*
日本英文学会*
日本NPO学会*
日本オセアニア学会**
日本音声学会*
日本解放社会学会*
日本学生相談学会*
日本家族社会学会
日本学校教育学会*
日本学校保健学会**
日本家庭科教育学会*
日本カナダ学会**
日本歌謡学会*
日本環境会議*
日本旧約学会*
日本教育行政学会**
日本教育実践学会*
日本教育政策学会**
日本教育方法学会**
日本基督教学会*
日本キリスト教教育学会*
日本近代仏教史研究会*
日本経営学会**
日本ゲニザ学会
日本考古学協会*
日本行動分析学会*
日本山岳修験学会*
日本シェリング協会*
日本ジェンダー学会*
日本史攷究会*
日本質的心理学会*
日本社会科教育学会*
日本社会心理学会
日本社会病理学会*
日本社会分析学会*
日本宗教学会* - 日本儒教学会*
日本職業リハビリテーション学会
日本女性学会*
日本新約学会*
日本生活学会*
日本生活指導学会*
日本体育科教育学会
日本第四紀学会
日本西蔵(チベット)学会*
日本中国学会*
日本地理学会*
日本哲学会*
日本道教学会**
日本動物考古学会
日本動物心理学会*
日本特殊教育学会*
日本独文学会*
日本特別活動学会
日本乳幼児医学・心理学会** 日本箱庭療法学会*
日本犯罪社会学会**
日本風俗史学会
日本福祉文化学会
日本仏教綜合研究学会*
日本佛教学会*
日本フランス語学会*
日本文学風土学会**
日本平和学会*
日本ヘーゲル学会*
日本保育学会*
日本保育ソーシャルワーク学会
日本保健医療社会学会*
日本保健医療社会福祉学会
日本ポピュラー音楽学会*
日本マイクロカウンセリング学会*
日本流通学会
日本労働社会学会*
ハイデガー・フォーラム
パーリ学仏教文化学会*
白山史学会*
比較家族史学会*
比較思想学会*
美学会
東アジア近代史学会*
貧困研究会*
福祉社会学会*
福島県史学会*
仏教思想学会*
文化史学会*
法政大学史学会*
北東アジア学会*
北海道考古学会
北海道社会学会*
美夫君志会*
武蔵野文化協会
洛北史学会
林業経済学会*
歴史人類学会
ロシア史研究会
ロシア・東欧学会**
早稲田大学史学会*
早稲田大学東洋史懇話会*
(五十音順。2021年6月7日)
(注)無印 学会として
* 学会理事会等として
** 会長として
「日本学術会議の新会員推薦6名の内閣総理大臣による否認」に関する会長声明文
2020年10月5日
日本社会福祉学会会長 木原活信
既に報道にありますように、日本学術会議の新会員推薦者のうち6名の方々が内閣総理大臣によって任命が否認されました。
日本学術会議は、2004年に改正された日本学術会議法によって学術会議内部の選考委員会で会員を決定し、内閣府に推薦して内閣総理大臣が任命することになっています。10月1日が任命式でしたが、突然の任命拒否ということは報道された通りです。
そもそも日本学術会議は政府に学術の立場から政策提言を行う独立した組織として活動してきました。そして、「科学者全体の総意」にもとづく組織としての性格を担っています。
今回の内閣総理大臣による推薦者の「否認」は、科学者の総意にもとづく組織の会員を政治が否認するという前代未聞のことであり、学問の自由を否定することになります。
日本社会福祉学会としては、このような事態を憂慮します。そして梶田隆章日本学術会議会長が表明されている「任命されていない方を任命していただくことを要望する」ことに賛同し、それを支持したいと思います。また梶田会長が要望されておられるとおり、法律に基づいて拒否されるのならその説明責任は政府の側にあり、その説明を強く求めます。
賛同学会(50音順)
社会事業史学会
日本介護福祉学会
日本看護福祉学会
日本キリスト教社会福祉学会
日本在宅ケア学会
日本司法福祉学会
日本社会福祉教育学会
日本社会分析学会
日本職業リハビリテーション学会
日本精神障害者リハビリテーション学会
日本ソーシャルワーク学会
日本地域福祉学会
日本福祉介護情報学会
日本福祉教育・ボランティア学習学会
日本福祉文化学会
日本仏教社会福祉学会
日本保育ソーシャルワーク学会
日本保健医療社会福祉学会
共同声明 日本学術会議幹事会声明「これからの大学のあり方-特に教員養成・人文社会科学系のあり方-に関する議論に寄せて」を支持する
2015年9月10日
一般社団法人日本社会福祉学会会長 岩田 正美
一般社団法人日本社会福祉教育学校連盟会長 二木 立
一般社団法人日本社会福祉士養成校協会会長 長谷川 匡俊
一般社団法人日本精神保健福祉士養成校協会会長 伊東 秀幸
2015年7月23日付日本学術会議幹事会声明「これからの大学の在り方—特に教員養成・人文社会科学系の在り方—に関する議論に寄せて」(http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-kanji-1.pdf)を基本的に支持する。この声明は6月8日の文部科学大臣による国立大学法人宛通知への基本的危機感を示したものである。社会福祉の大学教育は私立大学に多くゆだねられている。とはいえ、この通知は私立大学のあり方にも当然大きな影響を与えよう。
今日、社会福祉の大学教育は多様な学部・学科・コース等で実施されており、社会科学系、人文科学系に属することもあれば、保健・看護系に属することもある。とはいえ、社会福祉教育は、社会福祉士等専門資格設定に伴うカリキュラム導入によって、教育の標準化が進んできた。この標準化は専門職教育にとってその質を担保する上で不可欠であるが、反面各大学の教育の自由度は小さくなった。また「現場」からの「実学重視」の要請も強い。その意味では、文部科学大臣が今回通知した「社会的要請」にそった再編は、社会福祉教育分野ではすでに進んできたとも言えるかもしれない。
だが、「社会的要請」とは何か。「誰」の要請か。これに「どのように応えていくか」の答えは一様ではなかろう。社会福祉の大学教育にとって、「今役にたつ」専門スキルだけでなく、人間と社会の深い洞察を養う人文社会科学の基礎教養、社会福祉政策・実践の歴史的理解が不可欠なことは、これまでも確認されてきたところであり、その一部は標準カリキュラムへも反映されている。さらに進んで、大学内、あるいは大学間の協力で、多様な学問に触れ、そこにある価値の違いや批判精神を学ぶことを奨励していくことが、大学における社会福祉教育の意味であろう。大学における学問の多様性が社会福祉教育を支えていることを再確認し、すでに一部大学で始められている性急な大学組織再編の再考をうながしたい。
社会福祉系学会会長共同声明「戦後70年目の8月15日によせて」
2015年8月10日
日本社会福祉学会会長 岩田正美
日本医療社会福祉学会会長 岡本民夫
社会事業史学会会長 大友昌子
日本ソーシャルワーク学会会長 川廷宗之
日本看護福祉学会会長 岡崎美智子
日本仏教社会福祉学会代表理事長 谷川匡俊
日本福祉教育・ボランティア学習学会会長 松岡広路
日本地域福祉学会会長 上野谷加代子
日本福祉文化学会会長 馬場清
日本介護福祉学会会長 井上千津子
日本社会福祉教育学会会長 志水幸
日本職業リハビリテーション学会会長 朝日雅也
貧困研究会代表 布川日佐史
日本社会事業大学教員有志16名代表 辻浩
- 戦後70年の節目にあたる本年、自衛隊法、PKO協力法、周辺事態法、船舶検査活動法、特定公共施設利用法、国家安全保障会議設置法、武力攻撃事態法、米軍行動関連措置法、海上輸送規制法、捕虜取扱い法の10の法律改正をその内容とする「平和安全法制整備法案」および新たな「国際平和支援法案」の審議が進められている。これらはすでに昨年の集団的自衛権についての閣議決定に沿ったものであるが、従来の自国防衛から、「存立危機事態」へも対応でき、外国軍の後方支援も可能な「積極的防衛」への経路が、国民の安全や他国からの脅威を理由に広げられつつあるといえる。湾岸戦争時に「カネは出すが血は流さない」と国際社会から非難されたともいわれたが、今回の法案は「血を流す貢献」を可能にする環境を整えるものと考えられよう。だがこうした「積極的貢献」が、ある国をめぐる脅威の抑止力になりえるかどうかは、世界の各地で、今日も続けられてきている戦争の実態から、冷静な判断が必要である。
これらの法案が現行憲法に反し、法治主義をゆがめることについては、憲法学者を中心とした批判がある。ここでは社会福祉学の立場から次のような危惧を表明したい。①どのような正義の名の下においても、いったん始められた軍事活動は、それが「後方」支援であろうと、同盟国への支援であろうと、そこに巻き込まれた国々の人びとの命と日常生活を一瞬にして奪い、孤児や傷病・障害者を増やすだけでなく、それらの深い傷跡が、人びとの生活に長い影響を与え、しばしば世代を超えて受け継がれていく実態がある。②子ども、障害者・病者など「血を流す貢献」ができない人びとが、こうした事態の中で最も弱い立場に追いやられる。また民族や性別、階層の分断や排除が強められ、テロ等の温床にもなる悪循環が作られていく。③これらから生ずる「犠牲者」への援護施策とそのための財政その他の社会的コストは一時的なものではなく長期に要請されることに特に留意したい。戦後70年経ってなお、戦争犠牲者への援護行政が続けられ、またそれを巡ってアジアの諸国との対立が続いていることがその一端を示している。④財政再建を理由に社会保障・社会福祉費の削減が続いている今日、もし「積極的貢献」の負担増がこれに優先するようになれば、少子高齢化が深まる日本の社会福祉の未来は、更に暗いものとなろう。 - 他方で、日本社会福祉学会『社会福祉学研究の50年—日本社会福祉学会のあゆみ』(2004)所収の論文「戦後社会福祉の総括」において、著者阿部志郎氏は、戦後社会福祉が「戦時の「万民翼賛体制」のもとでの厚生事業との断絶があり、国家主義の否定の上に、戦後の民主的な社会福祉が到来したと認識しがちである」とし、自らも含めて日本の社会福祉が戦争責任を自覚してこなかったし、「アジアの国々はもちろん、沖縄さえ視野におさめていなかった」ことを深く恥じていると率直に告白されている(p7~8)。その点が、ボランティア運動でさえ「罪責感」を基礎に再出発した戦後ドイツの社会福祉との「決定的相違」だとも強調されている(p8)。私たちは、この阿部氏の告白をあらためて真摯に受け止める必要がある。社会福祉は、一方で一人ひとりの生活に寄り添いながら、同時に「多数の正義」の名の下での支配体制に容易に組み込まれる危険を孕んでいる。このことに社会福祉研究者は常に自覚的でありたい。
- 日本社会福祉関連の各学会は、90年代より国際交流を活発化させ、特に東アジア3カ国ネットワークの実現に向けて努力してきた。また留学生への支援も強化しようとしている。こうした交流の中で、社会福祉の今日的課題の共通性とともに、文化・歴史的背景の違いについての理解も深められている。「戸締まり」に気を配るだけでなく、国を超えた共同研究や実践交流の積み重ねの中で、相互理解を深めていくプロセスをむしろ大事にしたい。残念ながら、最近の政治的「緊張」が、こうした地道な相互理解の努力に水をさすことがある。しかし、回り道のようでも、緊張を回避していく別の回路を模索することが、学会や研究者の役割であり、国際的な社会福祉研究の水準を高める上でも意味があると考える。
戦後70年目の8月15日を迎えるにあたって、社会福祉研究者・実践者として私たちは、「血」ではなく「智」による、「抑止力」ではなく「協力」による未来社会を展望する努力を続けることを誓い合いたい。