【第23回】「つながり」の力:ソーシャルワークにおけるネットワーキングの重要性とそのスキル(吉川真由美)

日本福祉大学社会福祉学部助教
吉川真由美

自己紹介

 はじめまして。私は大学を卒業後、精神科病院や社会福祉協議会での勤務を経て、2023年から本学に着任しました。中学生の頃は設計士になることを夢見て工業高校への進学を希望していましたが、在学中の兄から拒否され、その夢を断念しました。
 普通科高校では部活動に熱中し、気づけば高校3年生の夏を迎えていました。成績が思わしくなく、卒業も危ぶまれていた時、担任の先生から「ボランティア活動をしてみてはどうか」と勧められました。そこで、高齢者施設のデイサービスや障がい者施設の夏祭りでボランティアを行い、人生で初めて高齢者へのケアの現状や知的障がいや精神障がいのある方々との交流を通じて「福祉とは何か?」と強く感じたことを今でも鮮明に覚えています。これまで福祉について意識せずに過ごしていた私の日常が、その瞬間から一変しました。
 さらに、当時祖母の認知症が進行し、家族介護の難しさを目の当たりにしたことで「福祉はこのままでいいのか?」という疑問が生まれました。そこから、認知症の方や精神障害のある方にかかわりたいと思い精神保健福祉士を目指して進学を決意しました。また、精神保健医療福祉領域について学ぶ中で「精神保健福祉士が必要とされない社会を作りたい」という目標も抱くようになりました。
 資格の有無や種類に関係なく、誰もが支え合い、幸せに暮らせる社会。その実現に向けて、福祉の現場に携わりたいと考えています。

研究内容

 私は、ソーシャルワークにおけるネットワーキングの重要性について研究しています。ソーシャルワーカーは、一人で仕事を完結することが難しく、常に他者とつながりながら実践を行っていました。この「つながり方」とは、専門的な知識や技術に基づくものなのか、個人の資質によるものなのか、あるいは経験を積むことで身に付くものなのかは、まだ明確ではありません。ネットワーキングはソーシャルワークに欠かせない要素ですが、その定義や解釈にはさまざまな視点があります。
 私の研究では、ソーシャルワーカーにとって重要なネットワーキングスキルを明らかにし、効果的なつながりを築くためのアプローチを探求しています。また、ソーシャルワーク実践でのネットワーキングの効果とその意義を解明することを目指しています。

当学会へのリクエスト

 私は現場でさまざまなジレンマに直面し、その解決策を探求したいと考えていましたが、通常業務等で研究に十分な時間を割くことができないのが現状でした。しかし、実践を通じて得た経験を理論に結びつけることで、支援の質が向上すると思っています。今後は、現場の人々にとって研究がより身近な存在となるよう、実践しやすい研究方法や現場の実践と理論の循環を共有できる場が充実することを願っています。
 引き続き、よろしくお願いいたします。