【第19回】精神障害のある人への支援について歴史研究を通して考える(山田 敏恵)

山田敏恵

愛知県立大学人間発達学研究科博士後期課程/医療法人仁精会 三河病院
山田 敏恵

自己紹介

 私は、医療法人仁精会三河病院に精神保健福祉士として勤務しつつ、愛知県立大学人間発達学研究科博士後期課程で研究を続けています。大学では関心のあった音楽学を専攻し、音楽三昧の4年間だったので、大学卒業後は社会勉強を兼ねて金融機関で働くことにしました。
 精神障害のある人とかかわるようになったのは、二つ目の職場である就労継続支援B型事業所に入職した16年前です。この事業所の利用者の方々は、月1回の音楽活動の時間には、日常に比べ、より活き活きとして充実した表情をみせてくださったのです。学生時代に音楽学を専攻していた私は、「なぜ、音楽でこんなに明るく積極的になるのだろう、『変化』の理由を知りたい」がきっかけで愛知県立大学人間発達学研究科に入学しました。
 研究をすすめるにつれ、精神障害のある人が必要とする医療・福祉サービス、また治療と生活支援にかかわる多職種連携についての理解を深めたいと考えるようになり、現在は精神科病院で実践と研究に取り組んでいます。

研究内容

 博士前期課程では、太平洋戦争終戦後から現在までの、精神障害のある人に対する音楽活動の展開過程に焦点をあてた研究を行いました。博士後期課程では、昭和期太平洋戦争開戦前の精神科病院の入院者に対する慰安活動に関する研究を行っています。
 精神障害のある人に対する戦前の慰安活動と戦後の音楽活動の実践に共通するのは、彼らに真摯に向き合ってきた治療者・支援者の姿です。これらの実践には、精神障害のある人と治療者・支援者との関係性、さらに社会との関係性の変化という広がりをみることができます。今取り組んでいる研究では、史料の中から先達が行っていた慰安の実践を掘り起こすことにより、慰安の意味を見いだしていきたいと考えています。史料はすでに現存しないものもあり、今後廃棄されていく可能性もあります。そこで、先達の実践を研究の結果として少しでも残すことを、研究における私の役割の一つと捉えています。
 また、この研究から、私たち支援者が精神障害のある人とどう向き合っていくべきかという課題に対する示唆が得られると考えています。

当学会へのリクエスト

 博士前期課程修了後、学会機関誌『社会福祉学』へ投稿を行っています。査読の先生方からは、リジェクトの際にも毎回丁寧なコメントをいただき、大変感謝しております。その都度、知識不足、考察の稚拙さ、論理の曖昧さなど自らの未熟さを痛感しますが、先生方からいただいたコメントの一つ一つに応えられるようになることを研究者へのステップと捉えて、コメントへの回答の作成と論文の修正に取り組んでいます。また、先生方の厳しくも温かい励ましのお言葉は、投稿へのモチベーションになります。まだまだ未熟ですが、今後も査読を通して鍛えていただけたら大変ありがたいです。また、貴重な成長の機会となる学会誌投稿の経験を他の若手研究者の方たちと一緒に積み、研鑽していくことを希望します。