【第20回】知的障害のある青年の学ぶ姿に魅せられて(寺谷 直輝)

寺谷 直輝

聖霊女子短期大学生活文化科生活こども専攻
寺谷 直輝

自己紹介

 現在は秋田県の短期大学で勤務していますが、生まれも育ちも愛知県です。約30年間過ごしてきた愛知県を離れ、2023年4月より現在の短期大学に着任し、現在まで保育者や栄養教諭の養成をしています。
 大学では歴史学を専攻しており、高校の地歴公民科の教員になろうとしていましたが、4年生の時に就職はまだしたくないからと、モラトリアム的に愛知県内の大学院に進学しました。大学院で出会った研究科長から補助を依頼された「教育臨床」という授業を通じて知った、愛知県名古屋市にあるNPO法人が運営母体である「見晴台学園大学」を見学しました。「見晴台学園大学」とは、学校教育法第1条で定められている学校の認可は受けていないものの、知的障害や発達障害のある青年の学ぶ権利を保障することを目的とした学びの場です。見晴台学園大学を見学する前まで、伝統的な大学教育の枠組みと知的障害のある学生たちのニーズとが一致しないと感じていました。しかし、実際に見晴台学園大学の授業を見学した時に、自分自身が大学で見てきた学生よりも、熱心に学んでいる青年たちの姿がありました。―知的障害があってもなくても、学びたい!という気持ちのある青年のために大学は存在すべきではないか― このときから、日本教育史から特別支援教育に研究領域を移して、今に至っています。

研究内容

 知的障害のある青年の学びの場に関心があります。特に、1990年代半ばから行われるようになった、主に知的障害者に対する大学の物的・人的資源を活用した生涯学習(支援)活動であるオープンカレッジが研究対象です。「見晴台学園大学」が設立された一因に、大学のオープンカレッジ実践が影響しています。オープンカレッジ実践の歴史やオープンカレッジが果たしてきた機能について研究することは、知的障害のある人が大学という場所で学ぶためにどのような社会資源や環境が必要となるのかを明らかにすることに意義があります。障害者の権利条約第24条で、「障害者を包容するあらゆる段階の教育制度及び生涯学習を確保する」を謳われています。権利条約で掲げられている機会の保障はもちろんのこと、実質的に学習する権利を保障するために必要な条件を、机上だけでなく実際にオープンカレッジの現場に観察して、知的障害のある人の表情や発言といったリアルから迫ることが魅力だと考えています。写真は、2023年に私が見学したオープンカレッジの開催校で撮影したものです。
 社会福祉学を主とした研究者ではありませんが、研究を進め、実践に関わる中で、社会福祉学の研究蓄積から学ぶことも必要になると感じています。
 ※写真は、2023年3月に行われたオープンカレッジに見学する前のものです。

当学会へのリクエスト

 愛知県(都市)から秋田県(地方)に移動した立場になって、会場までの交通費が高く、会場までの時間も大きな負担となることを意識しました。そのため、オンライン形式の併用は、今後も誰にとっても参加しやすい学会になるのではないでしょうか。
 なお、過去に書いていただいたリレーエッセイの先生方のリクエストは、どれも頷けるものばかりでした。結局、今までのリクエストは、誰によって、どのように受け止め検討されているのか、あるいは、返答されているのか。これについて知りたいのが、もう1つの「リクエスト」です。