【第24回】社会福祉の歴史から未来を考える(佐藤 昭洋)

東洋大学福祉社会デザイン学部子ども支援学科助教(実習担当)
佐藤 昭洋

自己紹介

 山形県出身です。社会福祉に関心を持つきっかけとなった1つは、認知症になった祖父の介護経験でした。この経験を通じて、人の生活を支える仕事に関心を抱きました。大学卒業後は山形県内の医療法人で社会福祉士として勤務し、地域包括支援センターや通所リハビリテーションに携わりました。大学の卒業研究で行った研究を続けたいと思い、大学院に進学し、修士号を取得しました。その後、博士後期課程に進む一方で、都内の社会福祉協議会での勤務も経験しました。これらの経験を通じて、現場の多様性や福祉の現実に触れたことは、現在の研究活動にも大きな糧となっています。
 その後、みたび山形に戻り、社会福祉士養成課程のある大学で初めて教員として携わり、2022年度から現職に就いています。2026年3月で任期満了を迎えるため、次のキャリアに向けた転職活動を頑張るところです。

研究内容

 私の研究テーマは、近代日本における社会福祉の歴史、特に育児事業や児童養護施設の歴史に焦点を当てています。中でも、五十嵐喜廣(1872-1944)という育児事業家の事績と彼が創設した日本育児院の実践史に注目しており、彼の活動が児童福祉や地域福祉の発展に与えた影響を探求しています。
 私の研究は、五十嵐の理念や事業運営の実際を分析し、彼が直面した課題やその解決方法を明らかにしています。さらに、五十嵐の事業が持続可能な運営を可能にした要因や、地域住民との協働の具体的な形態を解明することで、現代の福祉政策や実践に適用可能な知見を得ることを目標にしています。この研究を通じて、過去の福祉事業の知見が現代の福祉政策や実践にどのように活かせるかを明らかにし、社会福祉の向上に貢献できることを目指しています。
 歴史研究は、単に過去を知るだけでなく、現在を解釈し、未来を構築するための知識基盤を提供するものであると考えており、現代社会福祉のルーツや課題の本質を探る点などでも他のアプローチと同等に有効ではないかと考えております。

学会の魅力紹介

 日本社会福祉学会は、その学際性と実践性が特徴であり、さまざまな分野の研究者や実務者が集まり、意見を交換する場となっています。また、学会は学問の発展だけでなく、実践的な福祉活動の改善にも寄与しています。
 学会は、私たちの研究活動を深めるための貴重なプラットフォームであり、その活動の中で実務者や他分野の研究者と連携することで、社会福祉学の未来を切り拓く力が生まれると実感しています。

当学会へのリクエスト

 今後、学会が若手研究者をさらに積極的に支援する取り組みを強化することを期待しています。例えば、オンラインセミナーの開催や、若手研究者向けの研究助成制度の充実を通じて、研究環境がより整備されることを願っています。
 私自身も、学会活動を通じて研究活動をさらに深め、社会福祉学の発展に貢献していきたいと考えています。