【第22回】知的障害とは何かを求めて(坂倉 智大)

坂倉智大

日本福祉大学学生支援センター 学生支援相談員
 愛知県立大学人間発達学研究科 研究生
坂倉智大

自己紹介

 私は、日本福祉大学の学生支援センターで学生支援相談員として勤務しています。障害のある学生への合理的配慮の調整や相談対応などを行っています。加えて、愛知県立大学人間発達学研究科の研究生として研究を行っています。
 私には知的障害のある弟がいます。幼い頃から勉強を教えたり、一緒に遊んだりしていました。その後、弟に知的障害があることがわかる中で、大変なことが多くありました。弟との関わりが私の原点であり、弟がいなければこの分野に進んでいないと思います。私が大学へ入学する際に、弟のような人たちと関わりたいと考え、教育学部で特別支援教育を学びました。大学を卒業する頃、教育よりも社会での支援に関心が移りました。そのため、社会福祉の大学院に進学しましたが、研究が進まず中退し、社会福祉法人へ就職しました。
 就職した社会福祉法人は、主に知的障害の方が利用している法人でした。「知的障害」とひとくくりにできない様々な利用者と関わる中で、利用者の方々に多くのことを教えてもらいました。利用者の方々は、私を根気強く指導してくれる先生でした。利用者からの温かい指導を、どのように解釈するか一緒に考える上司や同僚がいたことも大切な出会いでした。
 周囲の方々のおかげで、支援者として経験を重ね、自身の支援に納得できることが増えました。一方で、利用者の要望に応えきれていないと感じることもありました。このことは、私に大きな課題を利用者が与えてくれたように感じました。よって、改めて大学院に入学し、研究によって自分の課題を解決することにしました。現在の職場と研究科には、この頃からお世話になっています。

研究内容

 博士前期課程では、1960年に知的障害者福祉法が成立して以降、入所施設が増加した要因を研究しました。昨今「脱施設」が議論される中で、入所施設が設置された意図や背景を明らかにする必要があると考えたためです。研究する中で最も考えさせられたのは、知的障害のある人の家族が施設の設置を求めていた点です。家族だけでのケアが行き詰まり、親亡き後の将来を悲観する中で、子どもの生活を任せられる場所を求めたといえます。
 現在は、知的障害のある人やその家族がなぜ生きづらさを感じ、入所施設を必要としたのか、その原因や背景について歴史を遡ることで検証したいと考えています。中でも私は、社会の人々が知的障害のある人を異質な存在として見る意識の問題に着目しています。社会の根底にあるこの意識は、現在にも通じていると考えています。「脱施設」に向けて、私たちは改めて「知的障害」が誕生した歴史を知り、受け継がれた差別意識に向き合わなければならないと思います。

当学会へのリクエスト

 初期キャリア研究者への支援をはじめ、当学会は入会直後の会員に手厚くご対応くださっていると感じています。一方で、入会を検討している方には、学会活動や支援の様子があまり把握できないように思います。入会を検討している方へ向けたセミナーなどがあれば、入会へ進む方も増えるかと思います。多様な方が入会し、当学会がさらに発展することを望みます。