北海道大学大学院教育学院博士後期課程
江 楠
自己紹介
私は中国黒竜江省・大慶からの留学生で、学部三年生の時に札幌大学・文化学部文化学科にまいりました。それまでは、社会福祉に関する専門知識を勉強したことはありませんでした。卒論の資料を調べる際、大学の図書館で偶然に社会福祉に関する文献を初めて読み、日本は社会保障システムが充実し、特に弱い立場の人々に対する政策が多い事を知りました。そこから社会福祉学に関心を持ち、修士課程では北海道大学の教育福祉論研究室を選択して進学し、現在は博士後期課程3年目になります。この良き機会に、自分の研究内容と当学会の魅力を紹介させて頂きたいと思います。
研究内容
修士課程に進み、日本の社会保障や福祉政策の専門知識を学び始めました。その中で、私は日本のひとり親世帯、特に母子世帯に対する政策と支援のあり方に関心を持ちました。修士課程進学から現在まで、北海道大学教育学院が道から受託し実施した「2017年北海道ひとり親家庭生活実態調査」のデータをもとに、母子世帯の生活実態や支援制度の利用状況、更に、ソーシャルサポートの利用状況と健康状況について研究を重ねてきました。
日本では、ひとり親家庭に対する政策と支援制度が数多く存在しています。しかしながら、量的なデータと自由回答の分析によれば、実際は支援が必要な母子世帯に、せっかくの政策が行き届いておらず、政策が不十分な現状と、課題が多くあることが分かりました。また、母子世帯の多くが経済的に困窮しています。母子世帯の貧困問題については、生活の多方面で様々な課題と結びつきやすいことが分かりました。母子世帯はふたり親世帯に比べて、 家族から受けられるサポートが少ない傾向にあり、親や親戚以外に頼れる人は少なく、社会的ネットワークが乏しいのも現状です。更に、母子世帯の母親の健康問題として、精神的・身体的な健康度が低いことも指摘されています。
現在は、ひとり親世帯の貧困、特にメンタルヘルスを含めた健康問題と社会関係について研究を進めています。具体的には、まず量的データから母子世帯の貧困状況の実態、そして健康状況と社会関係を把握しています。その上で、聞き取り調査を行い、質的データと量的データを合わせながら、母子世帯の貧困問題、健康状況、社会関係との関連性について研究を進めていきたいと考えています。
学会の魅力
当学会の魅力について、研究支援の部分から述べさせていただきます。
まず、今年3月より、若手研究者のネットワーク“CS-NET”が立ち上げられることは、とても重要なサポートだと思います。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、2020年度以降の全国の大会やフォーラムなどはオンラインで開催されることとなりました。これにより、移動時間やコストなどを節約でき参加がしやすくなった一方で、自分の大学以外の先生や院生と気軽に交流する機会が少なくなりました。このような状況下、“CS-NET”は若手研究者や院生にとって、ネットワークを広げ交流を深める貴重な機会になると思い、とても期待しています。また、当学会は学生会員を対象とした大会参加費の免除に加え、コロナ禍を考慮し、2020年度と2021年度には年会費の軽減措置がありました。学生会員にとっては感謝すべき研究支援制度だと思います。