日本福祉大学社会福祉学部助教 岸 佑太

自己紹介
はじめまして岸佑太と申します。年明け早々に風邪をひき、ベッドの中でこの原稿を書いています。福祉を志すきっかけについて、思い出しながら書くことで自己紹介の代わりにしたいと思います。
私は高校に馴染めず中退し、その後、海外で数年過ごしたあと19歳で日本に帰国しました。帰国後は、昼は中古車販売で営業として働き、夜はスナックでアルバイトをしていました。バイトをする中で、倒産による失職を経て夜のバイトをしながら高齢者福祉の道を目指している友人と出会いました。その友人の影響もあり、二十歳を過ぎたころに大学を受験しようと思い、まず大検を取得することにしました。友人が高齢者福祉の道を考えたことも、私が福祉学科のある大学への進学を選択したのも、当時は介護保険制度が施行された直後で「これからは介護(高齢者福祉)の時代」と言われていたことが大きかったように思います。
大学入学後、その友人が高齢者福祉の道へ進まず、病院で看護助手をしながら准看護師の養成学校に入学し医療の道へ進んだことを知りました。理由を聞くと「介護では家族を養っていけないので」と言われました。そうです、「これからは介護の時代」と言われながら「介護では家族を養えない」とも言われていました。
「看護なら生活ができて、介護では生活ができないのはなぜか」という疑問を抱きながら大学生活は過ぎていきました。大学院へ進学し、在学しながら社会福祉協議会に就職をしました。博士課程を修了する学業遂行に困難があったこともありますが、学生という身分の不安定さや福祉の仕事への漠然とした不安もあり、なにより早く安定した職に就きたいという気持ちが強かったのだと思います。
学生の頃の経験を活かせず、まさか比較的安定した仕事を辞め、40歳を過ぎて不安定な任期付きの仕事に転職するとは思ってもいませんでした。これからは自分が感じていた不安や働く中で感じていた疑問について向き合いながら、教育や研究に携われる立場を活かし、また学生を福祉職場に送り出す者の責務として、自分だけでなく福祉業界の未来についても考えていきたいと思っています。
研究内容
私は日常生活で「ちょっとした相談」ができることの重要性について研究しています。とりわけ、社会福祉協議会が実施している日常生活自立支援事業における「福祉サービスの利用援助」や「日常的な金銭管理の支援」などの役割に着目しています。日常生活自立支援事業は、金銭“管理をする”事業として認知されている側面もありますが、本来は金銭“管理を支援する”事業であり、その基盤には自己決定の原則があります。現在は、日常生活自立支援事業を自ら解約した人や、事業の利用を拒否している人へのヒアリングを行い、制度の運用における課題等について明らかにするとともに、管理ではなく「ちょっとした相談」によって生活が成り立っている生活実態を明らかにしたいと思っています。
当学会へのリクエスト
福祉は当事者の方と創っていくものだと思っています。自由研究発表などは、学会員ではなくとも当事者の方が共同研究者として報告ができたり、学会参加においても当事者枠を設けるなど、開かれていて、かつ気軽に参加ができる仕組みがあると良いと思います。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。