日本社会福祉学会第66回秋季大会(2018年度)開催概要

【特定課題セッション Ⅰ】

■テーマ:
「ひきこもり」問題をめぐる社会福祉研究を深化させるための課題と方向性
■コーディネーター:
長谷川俊雄(白梅学園大学)
■テーマの趣旨:
 「ひきこもり」をめぐる約30年間の推移と現状は次のように要約することができる。 わが国おいて、「ひきこもり」という現象が社会の注目を浴びたのは1990年代からである。最初の契機は、思春期・青年期の外出や就労をしていない少年・若者による少女監禁事件やバスジャック事件などがある。加害者の生活や行動に対人関係が希薄であり、室内で孤独に暮らしているという特徴をふまえて「ひきこもり」という言葉がマスメディアをとおして伝えられた。そのことを契機に日常用語として位置づけられた。その後、社会問題として認識されはじめ、1990年代後半からひきこもりに関する啓発書や専門書が刊行された。各家庭に潜在化していた「ひきこもり」という現象は社会問題として認識されることとなり、ひきこもりの子どものことで悩む親たちが相談機関・医療機関へ相談が集中する事態となった。こうした動向を受けて、民間団体がひきこもり相談や家族支援の活動を活発化させ、また精神保健福祉センターや保健所の保健医療福祉セクションを中心とした行政機関による支援も本格的に開始された。
 こうした動向を踏まえて、実践レベルでは、家族の不安を利用した悪質なひきこもりビジネスが当事者の監禁致死や暴行死などの事件を引き起こす事態が生まれた。こうした「悲劇」的な事件がひきこもり支援の質的充実やガイドラインを求めることにつながった。また精神医療を支援と脱精神医療の支援とのあいだをゆらぎながら、現在はひきこもり当事者の発言や自助グループの興隆をとおして脱精神医療支援が広範に展開している。
 政策レベルでは、ひきこもり問題を単独で対象とした法律制定は行われておらず、単発で部分的な施策や事業を展開してきた経緯がる。主要なものとしては、地域若者サポートステーション(2006-)、若者自立塾(2005-2010)、地域ひきこもり支援センター(2009-)、子ども・若者育成支援推進法(2010-)、生活困窮者自立支援法(2015-)等がある。最近は、35歳以上の高齢ひきこもり当事者へ焦点が当たり始めている。直近の地域包括ケアシステム(2015-)、「我が事・丸ごと」共生実現社会(2017-)の政策のなかでもひきこもり支援を対象としながらも方法・資源等は明確に示されていない。
 研究レベルでは、当初はひきこもり問題は精神保健問題として扱われており、精神科医や臨床心理士を中心とした「治療」を中心した症例研究とそこから導かれる支援方針が主流であった。その後は、国の委託研究として大規模調査に取り組まれひきこもり当事者数の推定値が示された。現在、社会福祉やソーシャルワークの視点や立場に立った研究は少ないのが現状であり十分な蓄積がされていないという課題がある。

【特定課題セッション】では、「ひきこもり」問題の社会的な関心が広がっていること、現代および将来に向けた社会問題として認識されている。そうした状況のなかで、社会福祉研究が「ひきこもり」問題に対して何ができるのか、どのように取り組むべきなのかという①研究課題の明確化、およびその②課題解決のための道筋・方法の検討を明らかにしたい。学会構成員の「ひきこもり」に関するさまざまな研究を持ち寄り、その研究から①と②を議論したいと考えている。