日本社会福祉学会 第67回秋季大会

特定課題セッションの各テーマおよび趣旨

【特定課題セッション Ⅰ】

■テーマ:社会福祉学における価値研究の重要性
■コーディネーター:中村 剛(関西福祉大学)
■テーマ趣旨:

1.趣旨

尊厳、自立、正義などは、社会福祉の政策や実践における主要な価値である。これらは目指すべき理念であり、社会福祉においては「理念としての価値」はハッキリしている。そのため、社会福祉学では「理念(目指すべき状態)をいかに実現するのか」といった「方法ないし技術的な事柄」が主要なテーマ・課題となる。しかしながら、価値研究は理念だけではなく、以下(1)~(6)のような内容もある。
 このセッションでは、価値研究の多様性を再認識するとともに、社会福祉学における価値研究の重要性、そして、そうした価値について探究する福祉哲学の重要性を明確にしたい。

2.募集するテーマ

(1)価値(理念)の内容の明確化

 理念として掲げられている尊厳や正義、あるいは自立など、社会福祉における主要な価値は、具体的には、どのような意味をもっているのか、明らかにする。

(2)既存の価値の吟味

 生産性、「役に立つ」、自立といった、近現代社会を支配している価値のよい点を理解しつつも、それらの概念がもつ問題点を提示する。

(3)価値の創造

 生産性、「役に立つ」、自立といった、近現代社会を支配している価値とは異なる価値に気づき、あるいは創造し、社会に提示する。

(4)価値や規範について考える機会(対話の場)の設定

 社会福祉という営みの基盤には「価値」がある。しかし、それらについて考えたり対話したりする機会が、実践の場でも教育の場でも十分ではない。価値や規範について、考え対話すること自体の大切さ(必要性)を明確にする。その上で、そうした機会を政策、実践、教育の場において設けるにはどうすればいいか、明らかにする。

(5)社会福祉学における価値の位置づけ―社会福祉学の構築のために―

 社会福祉学は、社会福祉という営みに関する「事実」を明らかにする。しかしその上で、その営みを生み出す原理(原理としての価値)や、目指すべき状態(理念としての価値)についても明らかにしなければならない。社会福祉学では、「事実」と「価値」はどのような関係の下で理解されるのか、明らかにする。

(6)福祉哲学のあり方

 上記(1)~(5)を研究する領域として福祉哲学がある。先行研究を踏まえ、福祉哲学のあり方・内容や、その可能性についての理解を深める。