2015(平成27)年度は、第二次世界大戦が終了して70年の節目になります。国内的には戦後の経済復興と生活困難者への生活支援に取り組み、1960年代以降の高度経済成長の歩みの中で、社会福祉制度が整備されてきました。しかし、人口の少子・高齢化の進行や、経済システムの変貌の中で、新たな「成熟社会」システムの構築が求められています。日本社会の行く末について悲観的に考える必要はありませんが、時代を大観して現実的な対応策を考えなければならないといえましょう。
日本社会福祉学会は1954(昭和29)年に創設され、2015年には学会設立61年目を迎え、会員も5300名となり新たな歩みに入っています。学会の役割は社会福祉学研究者・実践家の理論研究を深化・進化させるための組織であるとともに、社会福祉制度の充実に貢献することにもあるといえます。
社会福祉学と社会福祉実践は人びとの社会生活上の困難に関わる分野であり、困難を抱えている人々の人権の擁護と直結しています。古くは1965(昭和40)年の同和対策審議会答申を受けた、部落差別への取組みがあります。近年クローズアップされている虐待問題については、児童、配偶者、高齢者及び障害者への虐待防止法が施行されました。いわゆる障害者差別解消法も施行されようとしています。さらに現代の社会福祉諸改革の中でも、改革によって不利益を被ることのないように、福祉サービスの利用者への権利擁護が重要なテーマになってきています。こうした人権と直結した諸問題とそれへの対応について、社会福祉学はどのような貢献ができているのか、あるいはどのような貢献をすべきか議論していきたいと考えております。
※敬称略